結月でございます。
最近、本業のことを考える。本業ってなんだろう?って。
例えば、レストランのシェフをしていれば、その本業は料理人だよね。
料理人というのは、基本的に料理しかできない。だからこそ本業なのだろう。
そこで自分のことを考える。わたしは時折、
「本業はなんですか?」
と訊かれる。
なるほど、他人からはそう見えるのか。確かに弦楽器を販売したり、バイオリンを教えたり、着物を売ったり、着付けを教えたり、あとはコンサートを企画することもある。
自分では本業を意識して仕事をしてこなかった。かと言って、アマチュアかというとそうでもなく、すべて利益を上げるため、つまり利潤を追求する企業スタイルでやっているから趣味ではない。
内容としても素人仕事でもないし、コンサートでは当然、プロ奏者しか相手にしない。
だから、本業なんてなくてよくね?なんて思う。そして一方で、本業的なものがあったほうがいいと思うときもある。
新型コロナという人類史上でも記録的な出来事が起こり、社会が大きく変わろうとしている。
本業を持った人、例えば飲食店の経営者など、コロナの影響でその本業をやめざるを得ない場合がある。
コンサートを仕事にすると、プロ演奏者たちがこれからやっていけるのだろうか、つまり演奏を仕事にすることが持続できるのだろうかと心配になる。演奏という本業が失われてしまう現実がすぐ目の前にある。
本業しかなかった人が本業を失うと何になるのだろうか?
わたしみたいな人間は、コロナで着物の衰退が早まり、そしてなくなってしまっても、着物以外で何かやるに違いない。
それは本業をゆるく捉えているフットーワークの軽さというか、こだわりをなくせる執着心の希薄さによるものかもしれない。
でも、やっぱり本業がひとつで一筋であるなんていう生き方もいいんだよね、なんて思ったりして、いやいや、そんな一途じゃ、コロナや天変地異でやられちまったら生きていけないぜ、とも思う。
だからまあ、どちらがいいとも悪いとも言えるものでなく、
「どっちもどっち」
ってこと。
年齢が仕事に大きく関わるものは辛い。プロ野球選手なんて、30代で引退危機。すごい世界だなと思う。そして引退後は運が良ければ指導者になれども、大半はどこで何をしているのやらわからない。
人間はいつ死ぬかわからないから、要するに一生懸命やってる感じってもので充実しているのがいいのだろう。
特定できない本業であっても、一途な本業であっても大事なのは充実感で、それがあれば、まあいつでも死ねるわってくらいでいればいいよね、なんてさ。
ところでサラリーマンって本業はサラリーマン?
サラリーマンには本業がないのかどうだか。
会社のオーダーに応えるのが仕事であれば、それは本業でもない気がする。だから、リストラされたおっさんが再就職の面接で、
「前職は部長です」
なんて冗談みたいな本当の話が出てくる。
しかしながら、会社に雇われつつも、好きなことをやれている人も少なからずいる。
電通に入って、コピーライターをやってますなんていうのは、会社員だけれどコピーライターが本業ってことでオッケー?
定年退職したら途端にやることがなくなるって、それは今までやってきたことは本業じゃなかってってことになるのかな?
と、そんな疑問をうつらうつらと考えたりする暇つぶし。
でも、自分がどうしようと何かひとつの考えに決めてしまおうとも思わない。
芯になるものは決めていいかなと思いつつも、
「不器用ですから」
というのもコロナ時代には合わない生き方か。
思えば、着物を仕事にし始めたときはそれはそれはマジだったし、それ以前の弦楽器の店を立ち上げたときはやっぱりマジの中のマジだった。
仕事は数をこなすと要領を得て、不真面目ではないのだけれど最初の頃よりは楽になってくる。
それはそれでいいのだけれど、楽になると、
「それはそれでつまんないんだよね」
なんて言っちゃう。
要は初心でいられることがいいってことか。絶えず初心になれるようにしておく。
それはマルチに生きて、新しい新鮮さを別種のものに求めてもいいし、一途の仕事の中に困難を求め、ひとつの業種で常に初心を求めていくのもあり。
料理人だって決まったレシピで毎日作っていたら飽きてくる。ちょっと冒険して、今まで作ったことがない組み合わせで新レシピを生み出したくなる。
しかしまあ、人間には波長のような浮き沈みがあって、常に一直線というわけにはいかない。
今やってることが実に、実につまらなく思えることってあるよね。
ともかく、何がいいかなんて答えはわからない。
ただ、こうはなりたくないってのはある。
⑴ 週末のBBQが唯一の楽しみ
⑵ 自分から会社を差し引いたら、残るものがほとんどない
⑶ リタイアしたら、やることがないまま社会との接点を失う
などなど。
本業があっても、リタイアであれ、コロナであれ、それを失ったら生きてる情熱がなくなっちまうというのは困るよね。
そうそう、情熱。
本気と書いてマジと読むってことをやってるかどうかってことか。
本業は数の問題でなく、マジ度のことかもしれないよね。