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過剰な挨拶

結月です。

その薬局には5度目くらいだろうか。処方箋をもらって、いつも同じ男性薬剤師が対応してくれる。

いわゆる「いい人」っぽい男なのであるが、会計を済ますと、

「寒暖差がまだありますので、お気をつけください」

と、背後から言われる。

気にするほどでないにせよ、ドアを開けて薬局を出るとき、ちょっとばかり腹立たしい気持ちになる。その薬剤師のことは嫌いでもなんでもないのだが、薬剤師に「寒暖差を気を付けて」と言われることに馬鹿にされた気持ちになるのである。

薬局なのだから、

「お大事に」

だけでいいのに、と思う。

そんなに仲がいい関係でもないし、薬だけの関係である。子供でもあるまいし、寒暖差に気をつけろと言われなくてもわかってる。

もちろん、薬剤師はそんなつもりで言っているのではなく、親切のつもりなのだろう。アットホームな薬局を目指しているのかもしれない。

しかしながら、それは挨拶の用法が違うように思うのだ。

母親から、

「まだ寒なったりするから、気いつけえや」

と、言われるならなんとも思わない。母親にとってはいつまでも子供は子供であるから。

うちの母親はそんなことを言うタイプではないが、「寒暖差に気をつけて」というのはやはりもっと親しい間柄で、かつ自分より下の立場の相手に使われる挨拶であろう。

それをアットホーム演出でそんな挨拶をするのはどうもおかしいと思いつつ、薬剤だけの勉強しかしてこなかったから、きっと日本語には疎いのかもしれない、なんて嫌味を言ってみる。

挨拶とは本来、大きな意味はないもので、意味はないけどあったほうが人間関係が潤滑にいくというものだ。

「寒暖差に気をつけて」というのはちょっと挨拶以上の意味があるのに、それを客への挨拶に使うからどうもおかしいと感じるわけである。

わたしはそういうのをとても偽善的に思えるひねくれたところがあるから特別かもしれない。多くの人はそれを言われたって気にやしない。

そして、薬剤師に寒暖差に気をつけろと言われたところで、寒暖差なんかに気をつけようと思って実践する人なんかいやしない。薬剤師に言われたから、今日はちょっと厚着をしていこうなんて思うわけないのだから。

これも昨今の「サービス過剰」という部類のひとつだ。

要らないサービスなのである。客へできるだけ親切に丁寧にするつもりでその対応がウザったく、蛇足になる。

であるからして、薬をもらった後は、

「お大事に」

だけでよろしい。

「お大事に」はいい言葉だ。同じような言葉は外国にはあるのだろうか? 「いただきます」と同様、日本独特のような気がする。

「寒暖差に気をつけて」と言われるよりもさりげなく「お大事に」。

それが日本的な美しさであり、気遣いではないか。

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