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極端なものは魅力的

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結月です。

宇都宮の東武百貨店ではこのところずっと北海道展をやっていて、今日で来たのは3度目だと思いながらふらふら眺めていた。やはり海鮮ものの弁当が美味しそうで、ウニがたくさん盛られた物などは見るたびに買ってしまいたくなる。

お値段は1800円ほど。内容が変われば2500円のものもある。

しかし、買ってしまいたくなっても、やっぱり買わない。

それはもうどんな美味しさかすでに知っているからで、買って食べても美味しいとは思いつつも既知なものに感動がないのである。

そこに2000円ほど使うのも馬鹿らしくて、そんな2000円なら他のことに使おうと思う。

こういうのを「知恵の悲しみ」というけれど、「美味しい」を再確認するだけならつまらない。

わたしとしてはフライングガーデン、すなわち爆弾ハンバーグが出すレトルトのカレーが良くて、250円ほどなのにすこぶる美味しくて、これを家で食べるときは至福なのである。

この値段でこんなにうまいのかという再確認は快適で、しかも家ですぐに食べられる。ウニ弁当は再確認のためには高すぎるし、北海道へ行ったら比較にならぬほど美味しいに決まっているから、費用対効果がどうもという感じ。

特産物というのは現地で食べるに限る。現地の空気が美味しさを構築するのであり、空気がないところで物質だけ食べてもイマイチなのである。

パリに行って、行きつけのキャフェでルーブル宮殿を遠くに眺めながら一人で飲むワインは安物だけれど、これはたまらなく美味しい。パリの空気の中でしみじみとした感動にどっぷりと浸りながら飲むワインはわたしにとって格別。

と、宇都宮の寂れたオリオン通りを歩けば、必ず二荒山神社にお参りに行く。急な階段を登り切った時は息が上がるのだが、神社は欠かさない。

信仰というほどのものでないが、実は心霊家だし、ちょっと気持ちを浄化させておくかという感じ。

さて、その後、行きつけのショッピングモールにまたしても訪れ、もはや常連である。

ストリートファッションを扱う趣味の悪い服しか置いていないというショップでスカジャンを見る。この店はあまりにも自分のキャラに合わないアメリカ海軍仕様のジャケットを買ってから馴染みであり、店員にうちの愛娘はやけに懐いている。

スカジャンはかなり昔からほしいと思っていたがまだ手に入れていない。どうせ着るならエグいやつがいい。すると、前も後ろも豪快な龍の刺繍が激しく入っているものを見つけ、ちょっとほしいなと思ったりする。

展示されていたのはわたしのサイズに合うものでなかったが、サイズがあるかまでは聞かなかった。

しかし思えば、刺繍の着物というのはこのスカジャン並みに刺繍が入ってるよな、なんて今更ながらに気づく。とはいえ、着物の場合はスカジャンほど趣味は悪くないけれど。

ともかく、激しく龍柄のスカジャンで保育園に送迎したら目立つだろうなと目立つことばかり考える。

趣味の悪いものばかり見るのは、栃木に来て着物を着ることがなくなってしまい、ルックス的につまらないなと感じているから。東京だと仕事で毎日ド派手な訪問着でいたから目立って気分が良かったわけだが、田舎にいるとそうもいかない。

となると、エネルギーが発散されず、つまらん、つまらん、と思うものだから、激しく龍柄の刺繍でキメたいとなるわけである。

とはいえ、龍は子供の頃から好きで、なぜならわたしは龍神系の人間であるからで、スカジャンといえども虎は着ようとは思わない。

ちなみに自然霊は龍の他に狐、天狗などである。

と、龍柄のスカジャンはこれから春先にはちょうどいいし、サイズがあるなら、

「買っちゃう?」

なんて迷う。しかし、スカジャンに金をかけるよりも実は刃物好きであるわたしはツヴィリングの最高グレード「ボブ・クレーマー」の刃渡り16cmがほしいとも思う。

この間買ったツヴィリングの「雅」は刃渡りが20cmだったので、ちょっと小さめがいい。

しかし、「雅」の切れ味は驚異的で、ちょっと触れるだけでサッと指が切れてしまいそうである。

グレードとしては「ボブ・クレーマー」が最高で、言ってみれば資生堂のクレ・ド・ポー ボーテみたいなものだろうか。トヨタで言えばレクサス。

ツヴィリングの見るからに刃物好きな店員の兄ちゃんによると、「雅」まで来るとその上に値段的には「ボブ・クレーマー」があるが、切れ味はそこまで変わらないとのことである。

それはそうだ。「雅」でこれだけ切れたらこれ以上のものと言えども差は極小になる。

とは言いつつ、刃物好きは最高グレードがほしくなるのであり、なぜなら切れ味に大差はなくとも最高グレードを持っていないとすべてを語れないと思うからである。

クレ・ド・ポーを愛用してからこそ、資生堂製品のすべてにウンチクができる。

と、現実的には「ボブ・クレーマー」を買ったところで料理にどうということはないが、「雅」との使い分けを楽しみたいという刃物好きの欲望がある。

と、刃物好きと言っても刃物をコレクションしているわけでなく、最近になってやっと極上クラスの「雅」という包丁を手に入れただけで、あとは70cmの鯉の頭を落とすために買ったサバイバルナイフが一本あるくらいである。あとはヴィクトリノックスのキャンピングナイフ「チャンピオン」。

ところで「雅」と一緒に購入したツヴィリングの研ぎ機であるが、これがかなりの優れもので、今まで使っていた安物包丁もこれで研ぎ上がるとなかなかの切れ味になって、正直に申し上げてこれだけの切れ味があれば十分事足りる。

鶏肉を切るのもストレスなく切れる。ただし「雅」を使うときのような切る「楽しみ」がない。研いでよく切れるようになったが、安物包丁だと実務的な感じなのである。

「雅」は鶏肉に向かって一筋入れるだけで、

「強烈に切れるわ…」

と、感動がある。

そして、危うく触れてしまうと確実に自分の指も切れるというデンジャラスさがあって気が引き締まる。気が引き締まると自ずと料理にも気合が入る。

しかし、恐怖を感じるほど切れるので、いつかはミスって指を切ってしまうだろう。

と、スカジャンもちょっとほしいし、究極レベルに切れる「ボブ・クレーマー」もあれば楽しい。

極端なものというのは魅力的なのである。

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