結月でございます。
今日は那須アウトレットパークへ。佐野アウトレットには何度も行ったことがあるが那須は初めてで、サブカーのダイハツ・ミライースを愛娘と走らせる。
往復140キロの道のり。燃費のダイハツだけあって、ミライースはリッター28キロという最高記録を弾き出す燃費の良さ。
那須までは下道でも信号が少なく、ずっと流していられることがいい条件だった。どうやらミライースは時速50〜60キロで走らせ続けるところが燃費のいいゾーンであるらしく、70キロを超えてくると3気筒のエンジンは回転数を上げるから燃費が悪くなってくる。
しかし、愛車のメルセデスのほうはリッターで10〜11キロというところなので、リッター28キロは驚きの数字で、プリウスとも勝負できる性能なのである。
と、そんな那須アウトレットパークでは服なんか興味がなく、散歩をしていると、ドイツの刃物メーカー「ヘンケルス」の人型マークを発見。実は刃物好きなわたしはいつも使っている安物の包丁の情けなさを思い出し、店に入ってみた。
すると、店の兄ちゃんがいきなりやってきて、試し切りできますと言う。じゃあということで2本出してもらった。
聞くところによると、人が二人いるロゴはヘンケルスではなく「ツヴィリング」であり、一人のロゴがヘンケルス。ヘンケルスは大衆向けというかお買い得ゾーン。ツビリンクが高級ゾーンということ。しかし、会社名は正式には「ツヴィリング J.A. ヘンケルス」と言うらしい。
ヘンケルスの包丁は安物であるが大学の頃からずっと使っていて愛着がある。今でもそれは結美堂の台所にあって切れ味は悪くなっているが現役である。
しかし、愛娘に料理を作るマンションにある包丁は名もなきステンレスで、大したものじゃない。
やはり料理は道具が大事で、包丁がいまいちだと気合が入らないし、楽しくない。それをわかりつつも、わざわざいい包丁を買うのも面倒だなとずっと放置していた。
そんなときにいかにも刃物好きな店の兄ちゃんに試し切りをさせてもらって、同じく刃物好きなわたしは出された人参をスライスしてみて、ツヴィリングの1万5000円ほどの包丁の切れ味に感激してしまった。
「こ、これは…」
と、刃物好きなわたしは息を飲む。
「いいでしょう?」
「いいね」
好きなものには営業の能書きを聞いても苦にならない。なるほど、ふむふむと話を聞く。
「よし、これにしよう!」
と、即決。いいものは感動があり、迷わないのである。
そして、ついてにピザを切る丸いカッターや調理ハサミもチョイス。
すると、「雅」と書かれたいかにも趣味の悪い包丁が並べられているのに気づく。
「これは何?」
と、訊くと、
「これはさらに上位モデルです。お値段もそれなりにします」
一見すると趣味が悪く見えるのは、まるでタランティーノが好きそうなルックスである。キルビルである。
聞くと日本製で、しかも高級包丁の生産地、岐阜の関で作られていて、和の鉄人、道場六三郎と共同開発したものという。外国向けにしてあるからタランティーノっぽいのだろう。
これを試し切りさせてもらうと、
「ふぉぉぉ〜」
たまらんやないか。こりゃ、たまらんやないか。さっきのも十分よかったが、切れ味はさらに5%アップ。握り具合もフィット感最高。瞬間的に自分に合う。相性がいい女だと人目見てわかる感じ。もうずっと一緒にいたい。官能的なものを感じる。
と言いつつ、こんなのもありますと雅でなく、ツヴィリンクのちょっと上のものも出してくれた。それを試すも悪くはない。でも、雅ほどの相性いい女を思わせるフィット感がない。
「いや〜 やっぱりこれ。これはたまらん」
と、雅に決まる。
それはツヴィリングのプロ仕様「雅」の牛刀、刃渡り20センチである。
この雅というロゴの具合がキルビルっぽさを感じさせ、そこはわたしの趣味じゃないが、握った感じ、その重心、切れ味が相性抜群でこれ以上のものはない。
そして、ツヴィリングの砥石も買ってしまった。
これがかなりの優れものらしく、2段階の砥石が内蔵されていて、切れ味が悪くなるとこの隙間に包丁を通すだけでギラギラに研ぎ上がる。
ツヴィリングでは店舗で無料で研ぐサービスもしているらしいが、これを使っているとのこと。つまりこれもプロ仕様のクオリティで、家にあればいつでも店舗レベルに研ぎ上がる。
と、前世で侍をやっていただけあって、刃物が好きなわたしは刃物を見るとちょっとゾクゾクしてしまうのである。
しかし、この雅の牛刀の切れ味は驚異的であって、これを指に滑らすだけで骨までスッパリと切れる。デンジャラスなほどのシャープさ。
なので、小さな愛娘が触ると危なすぎるので、保護用の鞘も買った。この雅は鞘に収めて引き出しに入れておく。
この雅シリーズの牛刀はステンレスの素材がいいため、研いで使い続ければ死ぬまで使えるという。いや、死んだ後もこの包丁は現役であり続ける。
と、いい包丁を手にすると、とにかく使いたくなるもので刺身を冊で書いたくなるし、トマトを極薄にスライスしてみたくもなる。鶏肉だってサラリと切れるだろうし、魚だって易々と捌けてしまう。
料理をする行為が楽しくなるのであり、楽しくなるとおいしいものができあがる。
ところでツヴィリングは一枚1万円のまな板も出していて、これがまたいいものだったのであるといいと思いつつ、まあそこまではいいかと買わなかった。でも、いい包丁を使うと次第にまな板もほしくなっていずれ買ってしまうかもしれない。
いい着物にはいい帯。いい帯にはいい帯揚げ。そしていい帯揚げにはいい帯締め。そうやってクオリティというのは完成度を高め、最終的には美になる。
この雅という名の包丁。切れ味が美。
日本刀が包丁になったような仕上がりで、手放せない代物。そして誰にも触らせない。
道場六三郎も使っているというこの包丁で、明日は愛娘に何を作ってやろうか。