結月でございます。
都内の某コンサートホールの動画が流れてきて、バイオリンや弦楽四重奏の演奏だったので一応見てみると、
「これ、イマジナリーラインを知らない動画だよね…」
と、映像的な不自然さが気になって仕方がない。
映画を撮るならイマジナリーラインは基本中の基本なのだけれど、コンサートホールの人が撮って編集したのだろうか、その基本がない。
今はスマホでも動画は撮れるし、編集ソフトも使いやすいから業者に高い金を払わないでもまあとりあえずは動画配信できる。
そこに映像的なうまさや芸術性は要らないわけで、ちなみにわたしも自分のYouTubeチャンネルの動画は真正面からのカメラに喋るだけだし、照明も何もしておらず、明るさはiMovieで処理しちゃってる超絶いい加減、かつ手抜き。
これはどうせ喋るだけだから映像的表現が要らないからで、そもそも声だけでもいい内容だし、面倒な手間をかけると面倒すぎて続かないから撮影には手間をかけないようにしてる。
と、それは極端としても、器楽演奏を撮って配信するならイマジナリーラインくらいは知っとかないとね。
コンサートホール自前の配信だから、演奏者に対して好きなところにカメラが置ける。だからと言って、奏者の前後ろ、そして右左と欲張って全方位から撮って映像をつなげるとイマジナリーラインを無視しておかしな映像になるよ。
まあ、映画のように二人の人物の会話とかでないし、音楽を聴くことに集中すれば気にならないかもしれないとはいえ、でもやっぱりおかしい。
今は映像配信は当たり前だし、コロナのせいでクラシックも動画配信を始めたから、イマジナリーラインくらいの知識は必要かな。
それはいいとして、わたしは昔から言ってるんだけど、演奏を無料配信すればするほど客は来なくなるよ。
配信する側は動画で演奏を見てもらってコンサートに来るきっかけにしたいんだろうけど、それって逆効果だから。
動画を見たら、それでいいかって思ってわざわざチケット買わなくなる。
ネットもない時代は憧れの奏者の演奏をホールでリアルに見たら、それはそれは感動した。だって希少価値が高いから。
だから、その奏者が自分が住んでいる土地にやってきたら、必ず行くっていう興奮。
ところが動画でみんな無料でやり出しちゃって、その希少価値がなくなってしまった。
演奏者側もやっぱり音楽は生演奏を聞かなきゃ!みたいなことを言っておいて、PRとして無料で見せてんだから、
「もうちょっと考えろよ!」
と言いたくなる。
というわけで、わたしが今年から始めようと考えている音楽は、基本的にその演奏は動画では見せない。当然、CDも出さない。そもそもCDなんて儲からないからやらないけど。
もし動画で見せるとしたら、ほんのちょっとだけ。チラッとだけ。それもブラチラくらい。
きっちりと現場まで来て、お金を払って来てくれる人だけにしか見せない、聞かせない、そんな合奏団を結成したい。
もちろん、盗撮禁止。
そういう意味ではクローズドっぽい音楽会で、それを少しずつ規模を大きくしたいと思ってる。
だから、最初はお客さんは10人でもいい。いや、10人じゃさすがに採算が合わないから、もうちょっとか。
ともかく、じわじわと上質なお客さんがクローズドっぽい環境で増えていって、300席くらいの小ホールでやれるところまで持っていきたい。
そして音楽だけでなく、音楽以外の特典を設けてっていうか、実は音楽は中心でないのだけれど。イベント内容として音楽は中心的であっても、目的は音楽でない。
音楽が昔から好きなファンでなく、音楽を聞いたことがない人たちをメインターゲットにして、音楽「も」聴けるイベント。参加型プロジェクト。
普通、コンサートって聴いたら終わりだけど、目的は音楽じゃないから来場者の気持ちは途切れず終わらないものにする。
でも、あそこの演奏、いつもスゲーよねっていう評判。
今日日、音楽は音楽だけではやっていけないし、そもそも同じような客しか来ないから世界観が狭くておもしろくない。
なんてことをボチボチ考えていて、
「あっ、世間は緊急事態宣言なの? 興味ねーし」
と、先のことが楽しみだと、今のことなどどーでもよくなる。
音楽主催者はいろいろあるけど、コロナがどうとか、オーケストラの存続がどうとか今のことばかり言ってるところって、ありきたりで、昔ながらの、同じような、既存の、変わりばえしないことしかやれないに決まってる。
と、他人のことはどーでもいいんだけど、そのつまらなさぶりがむしろ反面教師になってくれて、
「そーじゃねーだろ」
という気持ちを起こさせてくれて、センキューベリマッチ。
なんて嫌味を言いつつ、やりたいことをやってみて、それで社会がちょっとでも動いたら楽しーよねってちょっと興奮。
いやいや、やってみたら毎度のことながらうまくいかなくて腹が立つことがあったり、やると大変なんだけどね。
すべてがスムーズに行くことってこの世にはないから、
「壁にぶち当たりながら大きくなる!」
なんて紋切り型のクサいことを言ってみる。
「やらない後悔はやった後悔よりもはるかに大きい!」
なんてまた手垢のついた自己啓発的なことも言ってみる。
今更、そんなことをわざわざ肝に銘じたりするウブじゃないわたしは、
「やりたいからやっちゃうもんね〜」
と、本能で生きてる。
そういうわけで、わたしはわたしで勝手にやるからいいんだけど、ホールとして動画を配信するんだったらイマジナリーラインくらいは勉強したほうがいいよっていう名指しはしないお節介。
まあ、そうやってうるさい奴がいるから、世間のクオリティは上がるわけだよ。
と、我田引水してみる。
うむ?これって我田引水で意味合ってる?
いやいや、ただ性格の悪さを自己正当化しただけ。