結月でございます。
生来、喉が弱いわたしは現在、喘息真っ只中。
喘息の咳というのは風邪のそれと違って、ボクシングのパンチでいうと、ボディーのような重さがある。
その重低音は殴られたみたいに脳味噌に響くものだから、咳のたびに脳内の毛細血管が衝撃波の広がりで破裂するようで、その時は脳内に嫌な味覚を感じる。
目眩はする。涙は出る。そして、激しい頭痛が残る。
ある一定の時間、喋ったりすると反応して咳が出始める。だから黙っているとそれほど出ない。
しかし、夜中、それも明け方にかけてどういうわけか喘息の発作は起きるものであり、それは子供の頃から経験則でわかっている。
昼間はケロっとしていて、寝る前もケロっとしているのに睡眠中に咳が出始め、喉がヒューヒューと鳴って目覚める。
明け方にかけての気温低下がアレルギー的に反応するからだと聞いたこともある。
そんな今日も鼻炎症状が出て、あまりのむず痒さで目を覚ますと、喘息も出て、どんな打たれ強いボクサーだってこれだけ打たれればダウンするというような連打の咳。
モードに入ってしまうと止まらない。
脳内の毛細血管が破れて、血だらけになっているんじゃないかと思うほど咳のたびに激しい頭痛がする。
それだけでなく、気管支が狭まるため、呼吸困難。しかし、今は気管支拡張剤のスプレーを吸入するとそれはすぐに収まる。とはいえ、咳だけは駄目。忍の一字で耐え忍ぶのだけれど、じっとしていられず、ソファに顔を埋める。
咳止めを飲んで、効き始めるのを待ちながら眠れないから本を読む。
とまあ、喘息になるとこのように苦しいわけで、発作が出るときっと自分は呼吸器系が原因で死ぬんだろうなと思ったりする。
激しい発作モードになるのは決まって夜中のせいで油断してしまう。つまり、朝起きると、咳き込むことはあれど、まあまあやっていけるので忘れてしまうのである。
しかし、ボディーブロー型の重低音な咳で、頭痛だけが残るものだから、
「こりゃ、吸入ステロイドをもらわなくちゃ」
と、思い立ち、さあ、いつもの病院へ行こうと思うも、木曜日は午後が休診だと気づく午後の人なわたし。
仕方がない。明日の朝、もらいに行こう。でも、吸入ステロイドは効果が出るまで数日かかるから、吸入しても数日は辛い。
さて、久しぶりのコンサートも近づいてきて、主催者がこんな喘息じゃ務まらない。
それに今回は宿泊型という初めての試みだし、雑魚寝組の和室で、真夜中に発作を出していると、間違いなく喘息を見たことがない人は、
「救急車、呼びましょうか!」
なんてことになる。
喘息患者にとっては、「構われる」ことが最も苦痛なのである。
構われると、気管を使って言葉で答えなければならないから、これが苦痛。どれくらい我慢すれば収まるかは、自分がよくわかっている。放置しておいてもらうのが一番助かる。
しかし、隣で寝ていて、死にそうになっているのを放置するいたたまれなさも理解できる。
だから、喘息患者というのは、死期が近づいた猫のように自分からその場を離れるのである。
あとはディナーの後のスモーキング会を楽しみにしているのに、喘息だと煙草が吸えない。
チェーンスモークしながら、馬鹿話をするのが殊更楽しいというのに部屋で大人しくしていなければならないじゃないか。
それに喫煙者には、
「タバコ、買っとけよ〜」
と、指令を出しているのに、そんなことを言ってる本人が、
「ちょっと調子が悪くて…」
なんて情けないったらない。
とはいえ、喘息状態の時は気管がとてつもなく「過敏」になっているので、声帯を使うのも駄目、ホコリも駄目。ましてや煙草なんてね。
ちなみに喘息患者は小さなホコリに敏感なのである。ほんの一粒が喉に付着する感触がわかる。
さて、明日は吸入ステロイドを病院でもらい、コンサートに向けてコンディションを作っていこう。いやいや、作るのではなく、治すか。