結月です。
夜空を見上げると雲ひとつない。
今夜はチャンス、愛娘が寝静まるのを待ち、天体観測に出かける。
天体観測は夜にピーカンである必要があり、これがなかなかない。ユニステラのeVscope eQuinox2で毎日でも星を観測したいのであるがタイミングが限られる。
やっと訪れた雲ひとつない夜空。いつもの観測スポットはクルマで10分未満。それでいて、一気に風景は田園風景であり、暗闇になる。
栃木に来てよかったことのひとつはこうして天体観測ができること。子供のときからの願望を叶えてくれる。
さて、ユニステラのこの望遠鏡は電子観望であり、スマホで操作できる。だから初期設定をしたらクルマの中に閉じこもって画像処理されるのを待つ。
2月の終わりとはいえ、寒い。外ではとてもじゃないがじっと待つことができない。だから望遠鏡をクルマのそばに設置し、スマホでコントロールする。しかし、フロントガラスからも満天の星が見える。
雲ひとつないから全方位で観測できる。その中で今日は憧れの「かに星雲」を見ることができた。宇宙の図鑑には必ず出てくる代表的な星雲。図鑑でしか見たことがなかったものをやっと自分で見ることができた。
ハッブル望遠鏡の写真だと驚異的な解像度で見ることができるが、それによるとかに星雲はプラズマで覆われているらしい。そしてその中心には中性子星がある。
そして今日は一番の感動だったのが、ソンブレロ銀河(M104)が観測できたこと。これも図鑑でしか知らなかった銀河。
直径が5万光年。気が遠くなるほど巨大な銀河がこうして見ることができる。
続いては、ベガ(こと座α星)。
他にもいくつか撮影した。
しかし、寒い。クルマの中といえども寒いのである。
クルマであるから暖房をかければいいが、エンジンを始動したくない。天体観測は静かな中で「感じ」たいのである。だから寒いのを我慢して星を見る。だが、手が悴むほどであるから、この時期はホッカイロがあったほうがいい。
あまりに寒いから気温を調べると、マイナス3℃だった。
気持ちとしてはこれだけのピーカンだからもっと他の天体を観測したかったが、凍えるほどだったし、トイレにも行きたくなるしで1時間半ほどで撤収。体が芯まで冷えている。風邪をひいてしまうと面倒である。
凍えているから前屈みになってハンドルを握る。
居住のマンションに戻り、禁断の日本酒熱燗を飲む。只今、急速に減量中であるからお酒は飲まない。そして飲まない快適さにハマっている。しかし、体が冷え切っているから熱燗を飲まないと本当に風邪をひいてしまいそう。
日本酒だから減量中には避けたいが予定外のツマミを合わせる。しかしそれは里芋を蒸したやつと今日、作ったこんにゃくの煮込み。カロリー的にOKなもの。
こんにゃくは普段わたしは食べないが、今日道の駅にほうれん草を買いに行ったら、栃木の鹿沼産の生こんにゃくが売られていたから買った。鹿沼のこんにゃくは大変美味しい。
それを柚子胡椒を合わせて煮込んだのである。
そんな減量メニューをあてにして熱燗を飲んだ。
体が温まる。
思い出したのは随分昔、パリのエッフェル塔に上ったが、油断してわたしは薄着だった。しかしパリはすでに寒く、さらにエッフェル塔は吹きっさらしで高度が地上より高い。ものすごく寒くて凍えてしまい、これは風邪をひく、パリで風邪をひいたら面倒だと思い、サンミシェルに戻ると行きつけのキャフェに飛び込んだ。そして、ブイヤベースの具のないようなスープを頼んで飲んだ。体が温まった。
そして、冬の北京。
北京は連日氷点下になるほど寒い。そんな北京を長く歩いて市場に行ったりしたら猛烈に体が冷えてしまった。これはヤバいと義母の待つマンションに戻ると、紹興酒を熱燗にしてもらいゴクゴク飲んだ。かなり温度の高い熱燗で、冷え切った体に染み渡り、それは美味しいものだった。
しかし、最も体が冷えた経験は結美堂山ガール部で雪の残る奥日光の太郎山に登ったときで、これはホテルに戻ってもガタガタと震えるほど体が冷えて、温泉に浸かっても体は冷えていた。熱燗を飲んで布団に潜り込んだ後もガタガタ震えた。温泉の熱さも体の芯には届かないほどだった。
と、そんな凍えた過去を思い出す。
でも、暑いのよりはいい。わたしは暑いのが苦手で、夏の天体観測は静けさを諦めてでもクルマのエアコンをかける。
さて、天体は季節によって見えるものも変化し、今日だけでも月が出ていたのに1時間ほどで沈んで見えなくなった。
まだまだ見てみたい天体がある。もし明日もピーカンなら出かける。ただし、ホッカイロを持っていくことにする。
天体観測は待つことができる人間でないと無理な趣味である。光学式の望遠鏡ならなおさらで数時間は軽く経ってしまう。暗闇の中で待つことを厭わない忍耐がその精神にないといけないのであって、だからこそ宇宙を見ることは哲学的なのである。