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お役目を持った猫

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結月でございます。

「あ〜 ひと休みするか…」

と、仕事の合間にベッドに横になると、2匹の猫がたちまちやって来て、1匹は胸の上、もう1匹は腕枕状態で、つまりわたしをベッドにしてくつろぎ始める。

胸の上にいる猫のお尻がちょうど顔面に当たっていて、これがなんとも気持ちがいい。

猫にまみれている。なんという幸せ。

わたしは猫と一緒にいるときが、最も幸せなのである。

猫は構いすぎたり、無理に抱っこしようとしたり、そういう自分勝手なことをすると嫌われてしまうが、その逆で関わろうとしないと猫から愛される。

ちょっとひと休みなのに、これだけ猫にベタベタされると幸せすぎて起き上がることができない。そろそろ仕事をやろうかと思っているのにこれだけくつろがれると気持ち良すぎて堕落する。

中枢抑制作用。

猫はちょっとした薬物のようでもあり、澱んでいくような眠気が心地よく、猫がいると眠れなくても眠れるし、眠ってはいけなくても眠ってしまう。

猫の柔らかい毛とその体重を感じてウトウトとし始めると、猫は気まぐれにサッとわたしの体から降りてしまう。

この裏切りが憎めない。

さて、うちには3匹の猫がいるが、相性が悪いのがいて1階と2階で分けている。であるからして、3匹同時にはいられない。

東京にいた頃は仲はいいほどでなかったが、それでも3匹で過ごしていたのに栃木に来てしばらくしたら何が気に入らなくなったのかうまくいかなくなった。

昔は3匹が一緒にベッドに来て寝ていたのだが、それはもう叶わない。

しかし、1階の和室に寝転がると、スタスタとやってきてわたしのお腹の上に来る。またしても中枢抑制作用の始まりである。

人間といて幸せなことはなくはないが、人間は面倒である。いいときもあれば悪いときもある。

しかし、猫はいつも変わらず、わたしの膝の上でくつろいだり、そばで寝たり、胸の上でお尻を向けたりする。であるからして、猫がもたらしてくれる幸福感は持続性があって、「いつでも」である。

人間はどんなに仲良くても四六時中一緒にいれば次第にウザったくなる。ところが猫にはそれがない。

猫がいてくれなかったら、どんなにこの人生が殺伐として、つまらなかっただろうか。きっと幸せなんて感じられやしない。

そろそろ寒くなってきたので、猫のためにホットカーペットを出した。

旅行に行きづらくなったのは、旅先でも猫のことばかり考えるからである。二泊三日まではまだいいが、それ以上となると人に頼まねばならないし、それでも猫のことが気にかかる。しかもそれが海外となると、何かあってもすぐに駆けつけられないからどうも気持ちが落ち着かない。

さて、人間には様々な幸せがあるものだ。多種多様。十人十色。

キャバクラに行くことが幸せという人もいるし、同じくホストクラブと答える人もいるだろう。週末のバーベキューが幸せでたまらない人もいれば、仲間と一緒にツーリングしたり、酒を飲んだりするのが幸せだという人もいる。

であるからして、猫の一緒にいることが一番の幸せというのは全体から見ると少数かもしれない。猫が好きな人は共通してそれを感じてはいるだろうが、そこにも度合いの差異があろう。

猫も寿命があるから、いつぞやはいなくなる。そうなれば、わたしは幸せというものを感じない人間になるのか。

でも、今いる猫たちと過ごした日々を忘れられないから、新しい猫を飼うなんていう気分にはならないに違いない。

猫とはお役目を背負ってやってくるものなのだ。あの人のところへ行っておやり、と人智を超えた高い次元の何かが猫を遣わす。

そして、お役目を終えると死んでいく。

わたしは猫がいなければ、もっとギスギスした人間で、終始ブチ切れているような人間だったのは間違いない。ましてや小さな子供を面倒看るなんて無理な性格だった。でも猫のおかげで随分穏やかになったと思う。

あまりにもわたしの性格がひどいので猫が遣わされたのだろう。猫の世話でもして、その可愛さから度量を大きくしなさいと高い次元の何かから言われているようである。

しかし、人間もきっとお役目を持って生まれてきている。

だから、死ぬまでの間にそのお役目は終えなければならない。自分のお役目を知らないと、お役目を終えずに死んでしまう。

自分が他者に対して何ができるのか。それが拡大されて社会に対して何ができるのか。

ちょっとずつ自分に課せられたお役目がわかるようになってきた。多分、こういうことをやらないといけないんだなと薄っすらとわかるようになってきた。

明確ではない。いろいろやっていきながらほんの少しずつ感じるようにわかるものだから。答えがいきなりバンッ!と出るものじゃない。

決して探すものでなく、なんとなくわかってくるもの。

人間はそうやって進んでいくのに、猫は存在だけでお役目を果たしている。

人間は猫には敵わない。

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