結月です。
有名なロック歌手がそのライブ中に脳幹出血で死んでしまったらしい。
既往症はなかったと記事にはあったが、そもそも脳卒中は積年の高血圧による動脈硬化があって、それがついに血管が耐えきれなくなって破れて出血するわけだから、それが起こる原因はしっかりと蓄積されていたのである。
だから、既往症がないなんて書き方をしているところに新聞の記者がわかってないと言えるわけで、でも一般的な認識はこの程度ってことはよくわかる。
わたしだってずっとその程度の認識しかなく、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、さらに心筋梗塞などは運悪くいきなりなってしまうもので、長年の生活習慣の蓄積で起こるなんてまるで知らなかった。
歌手は57歳ということで、脳卒中を起こすには妥当な年頃。
かく言うわたしも4年前に寝違えで受診した整形外科で高血圧が発覚し、寝違えなんかよりも血圧のほうがヤバいと整形外科医に言われ、一応寝違えの痛み止めは処方してくれたが、そんなことより血圧と言われた。
あまり問題意識は持たなかったものの、整形外科医がそう言うものだからマツキヨで血圧計を買って測ってみるといつも190前後あり、下の血圧でさえ160超えであったりして、ネットで調べると、
「これ、死ぬじゃん!」
と怖くなって、赤十字の夜間に訪れた。
「すんません、血圧が高いみたいなんですけど…」
と言うと、受付の看護師のおばさんはちょっと解せない顔をしていたが、ちょうど急患もいないときだったので案内してくれた。そして当直の医者に、
「血圧なんかで、こんなとこ、来ちゃ駄目だよ!」
と、怒られた。知らなかったが、夜間だから本当に死にそうな急患が来るところで、血圧なんかで来るところではない。
しかしながら、血圧を測ると医者は、
「あれ、本当に高いね…」
と、神妙な表情になり、
「こんなんじゃ、いつ死んでもおかしくないぞ! 生きてても半身不随で仕事なんかできなくなるぞ! ちゃんと循環器内科に行って診てもらうんだぞ!」
と、ものすごく叱られた。
とりあえず、弱めの降圧剤を処方してくれた。どうやら血圧とは高いからといっていきなり下げるのも良くないらしい。
そしてその翌日、循環器内科に行って血圧を測定すると、見事に血圧は200であって、デッドゾーンの大台に乗っていた。
専門医は大人しい人だが、絞り出すような声で、
「さすがにここまで高くなると、お薬で下げないと下がらないね」
と言い、
「これ、死にますよね?」
と言うと、
「まあ、そうね…」
と、断定はしないが、いつ脳出血が起きてもおかしくない、つまり今この瞬間に起きてもおかしくないというニュアンス。
そこから降圧剤で段階的に落とす。2週間ごとに検査し、それでも下がり切らないから薬を強いものにしていく。
最終的にかなり強い降圧剤で落ち着いたが、それでも上が150前後、下が100前後の日々であった。
降圧剤でも血圧高めで何年もいたが、今年の1月末から減量を始め、毎日エアロバイクでエクササイズすると効果はテキメンで、今は上は110前後、下も70前後になった。しかし、強い降圧剤だったため今度は立ちくらみを起こすようになり、弱い薬に変えてもらった。
と、エアロバイクの効果はすごく、というより運動をすれば血管が柔らかくなるらしく、いい状態になる。
とはいえ、長年の高血圧放置のせいで動脈硬化は起こしているから、これからのわたしは毎日、エアロバイクである。このエクササイズを続けていれば、脳卒中や心不全の確率は低く、逆を言えばやめれば死亡リスクが高まる。
しかし、気づけてよかった。文学部出身だし、医学のことは無知極まりなかったせいで寝違えてなかったら今頃ロック歌手のように死んでいたところだった。
とまあ、こんなプロセスを経て人は突然死ぬのではなく、突然に見えるだけで、実は積年の生活習慣によって死ぬことを知った。
今はそれなりに医療知識も身につけ、だから人を見ればその体型や肉付きの感じ、太り方でどんな食生活をしているか、運動不足かどうかはすぐにわかるようになった。
これから公演活動を通して、病気を予防できる啓蒙をしていこうと思い立って進めているが、それはジェネオケメンバーをはじめ、演奏家たちの生活習慣病がヤバいとわかったから。
ロック歌手だってライヴ中に脳出血するのである。クラシックの演奏家だってステージ上で倒れたっておかしくない。
今、活躍している世代は昔と違ってどっぷりと生活習慣病世代で、要するにうまいものがありすぎる中で生きている。遠征ばかりで食生活も乱れているし、当然エクササイズはしないし、いつ死んでもおかしくなかったわたしの目からは、演奏家だっていつ死んでもおかしくない人たちに見える。
死ななくとも後遺症で体半分が動かない状態で演奏ができない悲劇は訪れる。
高血圧だけでなく、脂質異常症、血糖値は要チェックである。
しかし、自分の体のことを自覚を持って維持するという啓蒙はなかなか通じない。わたしだって通じていなかったからこそ、ここまで放置してきたのであるからよくわかる。
ロック歌手が死んで、その動脈硬化のことが医学的に解説されていても、それを自分の等身大としての危機意識として持てる人はほぼいない。
だから、これから始める予防医療の啓蒙だって、どれだけ演奏家に通じるかわからない。でも発信して、発信して、発信して続けるうちに少しはわかってもらえるかもしれない。
もしかすると誰からが脳卒中で死んでしまったりするとやっとわたしが言っていることをリアルに考えてもらえるかもしれない。
でも、そういう啓蒙を口を酸っぱくして続けていないと、そんなサクリファイスが出ても、
「ご冥福をお祈りします」
だとか、
「昨日まで元気だったのになぜ!」
みたいな演奏家仲間のSNSコメントが溢れるだけで、突然の死は生活習慣の蓄積によるものだという事実が認識されない。
でも、本当にこれは伝わらない。なぜなら生活習慣病は無症状であるからで、サイレントキラー。
ほとんどのケースで40代までは症状は出ない。だからなんともないと思う。自分は健康だと勘違いする。
人間は愚かだから、症状がないと本気になれない。
ところが50歳を過ぎたあたりからぼちぼちと症状が出てくる。
それでも放置していると60代くらいで死亡率が高くなる。
ただ、40代以前という人生でもエネルギッシュな年頃に食べるものを節制するとか、なかなか難しい。しかも活躍すればするほどストレスもあったりして、暴飲暴食する。
でも確実にそれらは「蓄積」している。
ほとんどの病気とは原因と結果という極めて合理的結果なのである。林檎を手から話せば地面に落ちる。これくらい合理的なのである。
これから予防医療のことを啓蒙していくが、生活習慣の改めは他人の人生に口出しすることにもなるから、なかなか言いづらい。よほど関係が近くないと言えないものである。
だから、最初は誰に対してということでなく、全般的に啓蒙していく。結月がこんなこと言っているという漠然とした認識でいい。何年もかかる。少しずつ、少しずつ。
でもこれは医療関係者ではできないことなのである。なぜなら彼らはすでに発症した患者を面倒看るのに精一杯だからで、予防の啓蒙までは余裕がないのである。
さて先日、泌尿器科に行って薬をもらいに薬局へ行ったら、わたしの前の初老の女は薬剤師から血圧を訊かれ、
「167です」
とのことだった。
「おいおい、それ、ヤバいぞ!」
と、心の中で叫ぶわたし。