結月でございます。
コロナで公開が先延ばしされていた『トップガン マーヴェリック』、先週の金曜からようやく劇場公開されて、今日は朝一番で観に行ってきた。
「もう一回、観に行く!」
と、わたしのハートは躍動していて、この映画にはシビれまくって明日にでももう一度観たい。
とにかく戦闘機が美しいのは前作と同様でアメリカ海軍全面協力でガチンコで撮影している。昨今のほとんどCGといった嘘臭さがない。
エンタメとしては最高の仕上がりで、クールに見ればお馬鹿な映画だなと薄々思いつつも、それを吹っ飛ばすほどのド派手で、エキサイティングな内容。
映画開始数分でマーヴェリックが最新鋭の戦闘機でマッハ10に到達するところで、わたしはエキサイティングにエクスタシー。
前作を最低限に、さらに大事なものとして引き継いでいて、要するに相棒だったグースの息子がラストではマーヴェリックと再びF-14に乗る。展開的には敵の戦闘機をあんなかたちで盗めるはずはないとわかっちゃいるのにドキドキしてしまう映画ならではの楽しみ。
そうなのである。映画とはああでなくちゃいけない。アホくさくて、馬鹿っぽくて、でもそれは強烈におもしろい。映画はエンタメであるべきなのだ。
映画を観ていて、マーヴェリックが撃墜されてあのままマーヴェリックが死んでしまうラストでもいい気がした。そのほうがシリアスだし、映画を完結できる。
しかし、脱出していて、さらに助けたはずのグースの息子もマーヴェリックを助けに戻り、戦闘機を盗んでドッグファイトを展開するのを見て、
「そうだ、この映画はアホなエンタメなんだから、マーヴェリックは死んじゃいけないんだ」
と、思った。
脱出したマーヴェリックが雪の森の中を全力疾走するのも、そんな体力あるわけねーじゃんってのはわかってる。でも、これはそういう映画だからおもしろいんだ。さらに走る姿、背筋を直線的に真っ直ぐにして走るシルエットはミッション・インポッシブルでも見られるトム・クルーズの最高のシルエットなのである。それを見たら現実なんてどうとかどうでもよくなる。
攻撃に選ばれなかった男が最後に第5世代戦闘機を撃墜してマーヴェリックたちを間一髪助けるのも、優秀でありながら選ばれなかった時点で絶対に最後は出てくると薄々わかる。そして、やっぱり最後の最後に出てきた。そんな馬鹿らしいほどのお約束に観客は感激する。
砂浜で上半身裸の男たちがフットボールをするのも前作からのお約束で、そのホモソーシャルな描写、そしてそんな男たちの子供っぽい戯れを眺める熟年の女。その視線は母性的なもので、これまたわかりやすすぎるほど馬鹿っぽいのにそのシーンにちょっと感動する。
この映画は前作をリアルタイムに観ていないとこれほど大きな感動は得られない。1986年から観客はマーヴェリックと一緒に年を取り、その長い空白を経て今があるのである。
1986年からマーヴェリックは事故死した相棒のグースを思いやり、いまだに写真をベタベタ貼り付け友人を想っている。前作からの観客もその歳月の重みがリアルに感じられて、その息子と飛ぶことに時の流れでも継承される男のハートに涙が出る。
ランボーもグーストバスターズも80年代の傑作で、80年代はそんなカリスマ的な傑作がたくさん生み出された時代だった。しかし、今は映画制作のスパンも短くなり、すぐに続編が作られてしまう。
観客が時の流れを感じる間もなく、興業的な理由ですぐに続編が出てくる。だから、今は数十年も後に続編ができるようなカリスマ的な映画は生まれにくい。
そして、ランボーもゴーストバスターズもトップガンも80年代の大きな映画的資産を用いて作られた続編。言ってみれば、新しいコンテンツではない。使い切ってもうおしまい。
しかし、トム・クルーズはスターだった。80年代と変わらぬスターで、あの肉体は見事だし、空母の甲板に立つシルエットだけでトップガンを物語っている。
日本国旗や台湾のワッペンが背中に貼られた革ジャンを着る前作からのお約束。
レイバンのアビエーターをかけてカワサキのバイクをノーヘルで疾走させ、滑走路から飛び立つ戦闘機と並ぶマーヴェリック。これも前作で描かれたカッコ良すぎる映画的描写。バイクにヘルメットなんかダサい。ノーヘルで走らせるべきである。
まさにこれが映画!
映画はあり得るはずもない夢を描く。冷静に考えればあるはずがないことでも大事なのはカッコいいことなのである。
アメリカ海軍が格納庫で授業をするわけがないのは前作と同じ描写で、さらにそこにデカすぎるほどの星条旗があるのも映画。この新作では前作よりもさらに星条旗がデカくなっていて、もう馬鹿らしいったらない。あんなデカい星条旗が格納庫に飾ってあるわけがないじゃないか。しかもその前に椅子を並べて教官が授業をするわけないじゃないか。
でも映画はそれがいいんだ。これはアメリカの戦闘機が世界で一番強くて、そこに命懸けのパイロットたちの映画だから星条旗はあり得ないほどデカくていい。
そんな徹底的に映画的エンタメに徹したこの映画、しかも戦闘機を本当に飛ばして撮影したリアリズム。80年代からの時の流れを感じられた懐かしさと今。『トップガン マーヴェリック』はとにかく映画だった。これぞハリウッド映画という映画だった。
さて、今日は平日の朝一番の回だから公開して間もないとはいえ、映画館はガラガラでゆっくり観られると思った。しかし、知らなかったが今日はチケットが大人1200円の割引デーで劇場内は三分の一ほど埋まっていた。
観客は平日ということもあるが、60代より上の世代ばかりでかなりの数でおばさんたちがいた。
戦闘機の話だから不思議に思ったが、これは80年代からのトム・クルーズのファンなのだろう。前作のときにトム・クルーズのかっこよさにメロメロになった世代の人たち。
思えば、わたしだって前作を観たのは中学生のときだ。
映画のテーマ曲は変わらず、あの鐘の音が聞こえると気分は80年代。
前作から引き継いで変えてはいけないところは変えていないこの新作に1986年から待ちわびていたファンは納得する。
その間、戦闘機はF-14は古典的なものとなり、今はステルス性能の第5世代戦闘機、F-35の時代。さらに戦闘機にパイロットが乗るのも不要になりつつあり、無人機である。
それだけ月日が経っているのにトム・クルーズはやっぱりカッコよかった。