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自然のアンバランスが色っぽい

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結月でございます。

今日はBSで映画「必殺!主水死す」を見ていた。昨日は「必殺!恨みはらします」を見た。2夜連続放送だったのである。

やっぱり必殺仕事人はおもしろい。

今日の「主水死す」では本当に中村主水が最後に死んでしまったのはショックだったけれど、1996年の作品で藤田まことも年を取っていた上にシリーズとしては主水が死なないと終われない。

中条きよしも流石におっさんになっていて、顔に美的さやキレがなくなってきていたから1996年で限界だろう。

しかし、あの時の東ちづるは全盛期で魅力的だよね。人って全盛期は本当にきれいなものだよ。とは言っても、そもそも全盛期がない人が大半なわけだけど。

でも、いくら全盛期の東ちづるでも必殺!としては何でも屋の加代、鮎川いずみには敵わない。必殺!の鮎川いずみは本当に綺麗で、着物姿もものすごくいい。いやいや、東ちづるの着物姿もよかったけどね。でも、やっぱり鮎川いずみだよ。ちょっと格が違う。

映画には名取裕子が出ていて、これまた綺麗というか、たまらんないね。日本の女って感じ。日本人の美しさだね。

鮎川いずみや東ちづる、名取裕子がたまらなく見えるのは、やっぱりあの時代は整形手術をしてないからだよ。だから、自然な雰囲気がある。

顔としては決して整っていないのだけれど、整っていないから色っぽい。

今の女優はみんな整形で整えすぎているから、色気っていうものがないんだよね。色気はバランスが完璧でないところに宿るものだから。

要するに今は整えすぎて不自然。不自然を通り越して不気味というか、人間っぽさがないのよね。

そしてみんなやたらと目をデカく手術するから、結果、みんな同じ顔になって個性がない。

名取裕子なんてどこから見ても名取裕子で、よく見ると口なんかちょっと斜めなんだけれど、それがいいんだよ。

整形に頼ると、どうしても演技もドライになる。

生身の顔をどうにか色っぽく見せようとするからいい演技になって女優として凄みが出てくるんだけど。

「必殺!恨みはらします」では岸田今日子が出てる。もうたまんなく色っぽいんだよね。

岸田今日子は美人じゃない。それなのにド級に色っぽいんだよ。安部公房の砂の女だね。

そして、岸田今日子は声だね。あの声がたまらないんだよ。たまんないね、あの声は。小津安二郎の映画にもバーのマダム役で出たりするけれど、声がいいんだよ。あの声が聞きたくて酒を飲みにくるっていう男の心理を小津さんはよくわかってキャスティングしてる。

もし岸田今日子が整形なんかしちゃったら、魅力は台無し。あの顔だからすごくいい。

今は整形がお手軽になって抵抗感も薄れた時代であるけれど、コンプレックスを解消する手段としてはいいとしても、結局のところ仕上がる顔がどれも同じっていうところで没個性なのよね。

だから、今は見た目はなんとなく整ってはいても凄みのなる人は少ないのかもしれない。これは映画だけでなく、どのジャンルもね。

「主水死す」は1996年の作品。まだギリギリああ言った映画を作れた時代かな。ギリギリね。

やっぱり時代劇として「映画だな」って思うから。フィルムで撮ってるしね。

今はもうあんな映画は撮れない。まず、時代劇を撮れるスタッフがいないから。だから今の時代劇はパロディっぽい現代劇をちょんまげでやったみたいなものばかり。

「主水死す」はカメラもライティングも本当に映画なんだよ。そして津川雅彦のメイクね。あれは映画だね。映画を感じさせるよ。

「恨みはらします」は1987年の作品。真田広之が若くて、ラストでその卓越した運動神経を披露して立ち回りをするのはよかったね。

千葉真一の合羽からサッと子供が出てくるところとかね。映画だな!って感動したよ。

あれ、深作欣二が監督なんだよね。ほんと、「らしい」よ。

必殺!としては「恨みはらします」のほうが必殺らしいエンタメな仕上がりでいい。「主水死す」はちょっとシリアスだから。

ああ、そう言えば北斎の娘役の美保純もいいんだよね。あのキャスティングと演出は新藤兼人監督が撮った「北斎漫画」のオマージュかな? 

「北斎漫画」では北斎の娘役を田中裕子がやったけれど、これはもうぴったりでね。ちょっと痴呆がかったところがあってエロいんだよ。

そのイメージがあって、「主水死す」ではまた田中裕子かと思ったら美保純だった。あまりに似ていて気付くまで時間がかかった。

美保純と言ったら鈴木清順の「春桜 ジャパネスク」っていう変な映画に出ていて、着物着て帯締め締めるシーンがすごくよかったよ。鈴木清順って呉服屋の息子だったから、あの演出ができたんだと思う。

そんな鈴木清順が「主水死す」では北斎役で出ていて、ちょっと笑っちゃった。

とにかく、必殺!はキャスティングがよくて見応えがある。でも、中村主水の藤田まことがやっぱりいいよ。

藤田まことの声がまたいい。セリフにドンピシャでハマっていて。そして、刀を抜いたら達人なんだよね。普段はダサいのに実はカッコいいという典型。

藤田まことが刀を抜くのと見ると、わたしも日本刀ほしくなるよ。実は刃物好きなわたしは日本刀があったらいいなと思いつつ、あんなものを持っていたら発作的に誰かを切りたくなって危ないから持たない。刀を持つのは前世で卒業して今生では女の人に着物着せたり、音楽やってるほうがいいよ。

ところで必殺!は東山紀之で今も年に一度はやっているらしいけれど、もう最悪で見る気がしない。昔、ちょっと見てこれはもう必殺!じゃないと思ったよ。

その後もたまたま遭遇してしまって、その最悪ぶりに腹が立ってきてね。必殺!は「主水死す」で終えなきゃいけないよ。

藤田まことの凄みに慣れているから、東山紀之の軽さがもう見てられない。でもよく引き受けたよね。普通なら自分には無理って断りそうなものだけど。

藤田まこと以降の必殺はフィルム撮影でないし、映像としても軽すぎて、昔の中国のコピー商品を見せられるような気分。

映画としてスタッフも力量がなくて、だから安っぽいものしかできない。もう時代劇は日本では撮れないね。

まあ、コロナで延期になっていてようやく今年の6月に公開される「峠 最後のサムライ」が日本の時代劇の最後の作品じゃないかな。

これは黒澤組の映画で監督は黒澤さんの助監だった小泉監督。

キャメラはもちろん上田正治さん。そして弟子の北澤さん。

上田さんとは何度かベロベロになるまで飲んだ。話がおもしろすぎてさ。北澤さんは長らく会ってないけど、映画学校時代に撮影を教えてもらった。

だから、「峠 最後のサムライ」が公開されたら見にいくつもりでいるけれど、正直に言って古いなとは思う。こんな映画を今撮っても誰が見るのかなとは思う。きっと劇場は高齢者だけだよ。

そういう意味で令和になった今、日本の本物の時代劇はいくらいい作品を撮ってもニーズがないというか、時代にマッチしていないのだろう。だからこそ、この映画が日本の本格的な時代劇の最後になると思うわけ。

でも、わたしは上田さんのキャメラが本当に好きだから見にいく。上田さんの撮影、それはもう美的だから。黒澤映画を支えた人だからね。

とまあ、人間臭さが好きなわたしとしては、やっぱり昔の映画のほうを見ちゃう。今の映画は展開勝負で、高速のカット割で話を進めて飽きさせないという手法が多いから、その中身のなさに退屈しちゃう。というか、見終わった後に、

「時間の無駄だった…」

と、後悔しちゃうんだよね。

わあ、映画だな!っていう凄みがある作品を見たいよ。でも、それは今の映画で探すよりも過去の作品を見たほうが出会える。

そういう意味でわたしにとって映画は終わってしまった。

たまたまテレビで必殺!をやってるから見るという程度で、昔の名作もたくさん見たからもう積極的には見なくなった。

整形美人ばかりで人間臭い凄みがない女優が出ている映画はポスター見るだけで見る気がなくなる。

まあ、整形で程よく整った顔って音で言ったら、ストーミング再生の音楽って感じ。奥行きがなくて薄っぺらい。大事な周波数を圧縮されてプラスチックみたいな音。

やっぱりSPレコードとか、LPレコードだね。音が生々しくて人間臭くて。

だから今の映画の安っぽさはそういうところにあるんだと思うよ。技術的に楽になりすぎたっていうのもあるかな。

今のカメラはライティングしないでも映っちゃうから、奥行きのある仕事ができないよね。フィルムだったら照明を作り上げないと映らないからいい絵になる。中村主水の顔が蝋燭の火と影がコントラストになっているなんて最高だよ。

なんて話をしすぎると、わたしが古臭い人間に思われるからもうやめよう。

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