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喜びの歌はどうして喜びなのか?

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結月でございます。

今日、4歳の愛娘にバイオリンを教えていた。4歳児は月に2度、東京藝術大学出の先生のところにレッスンに行き、家ではわたしが教えている。

今日は「よろこびのうた」が教本にあったので初めて弾かせた。そして、これってベートーヴェンって人が作った曲なんだよね、とわたし。

「CDで聴いてみる?」

「きく、きく〜」

と、4歳児。

CDをセットし、第4楽章から聴く。まずは低弦での旋律。

しかし、久しぶりに第九を聴いたけれど、やっぱりいい曲だなと思った。でも今、モーツァルトのレクイエムの公演を控えているわたしからすると、

「やっぱベートーヴェンって人間レベルなんだよね」

と、思っちゃう。

ベートーヴェンはものすごい作曲家ではあれど、あれは人間レベルのメガマックス。あれは人間の音楽。ところがモーツァルトとなると天界なんだよ。人間を遥か超えた天界。もしくは神界。

だから、モーツァルトは人間臭くないというか、いや人間を感じるものはあるのだけれど、ベートーヴェンみたいに汗臭くない。第九の4楽章なんて聴いているだけで汗臭くて、声楽のソリストや合唱団やオーケストラ全員の汗まみれの様子まで思い浮かんでくる。

と、それがベートーヴェンの魅力ではあるのだけれど、わたしはまもなくマロオケのレクイエムで霊界を感じてしまうのである。

さて、4歳児と第九を聴く。

途中、拍子が変わって行進曲になるところ。あそこはおもしろいよね。鼓笛隊みたいな音楽で、笑っちゃう。リズムがおもしろいよ。

あの場面を聴くと、スタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』を思い出してしまって尚更笑える。

「ゲラゲラゲラゲラ〜」

と、わたしが笑うと、4歳児も、

「ゲラゲラゲラゲラ〜」

と、一緒に笑う。

やはりあそこは子供が聞くと笑っちゃう楽しさがあって、子供向けなんだよね。あのシンバル、やりたいと思うよ。

あの場面は真面目に聴いちゃいけない。あそこは笑うところ。それをキューブリックは的確にわかってたんだろうね。あれはベートーヴェンがふざけて遊んでるんだよ。

ところで「よろこびのうた」だと言うと、4歳児は、

「どうしてよろこびなの?」

と、訊く。

「どうしてって、ここは喜びの音楽で、うれしい!ってとこだよ」

と、わたし。

「なんでうれしいの?」

と、4歳児。

「生きててうれしいからうれしいんだよ」

「どうして?」

「そりゃ、ベートーヴェンは耳が聞こえなくなっちゃって、でも生きてりゃいいことあるからうれしいわけさ」

「なんで耳が聞こえないのにうれしいの?」

「そりゃ、聞こえなくたって、生きてりゃうれしいことがあるからだよ」

「なんで?」

「なんでって、うれしいからうれしいんだよ。だからよろこびの歌なんだよ」

「耳が聞こえないのによろこびなの? なんで?」

「そりゃ、生きてりゃそんなもんだよ」

「ベートーヴェンは耳が聞こえなくて死んだの?」

「もう随分昔の人だから死んでもういないよ」

「死んだのによろこびなの?」

「ベートーヴェンが生きてる時によろこびだったんだよ」

「なんで?」

「なんでって、ベートーヴェンに会ったことないから知らないよ、そんなこと」

「うれしいから、よろこびの歌にしたの?」

「いや、知らんよ。そういうのはマロさんに訊いてよ。マロさんが詳しいよ」

というわけで、あまりに根源的な質問をたくさん浴びせられたので、リハーサルのときにマロさんに教えてもらうことにする。

さて、第九。今更聴くような曲ではないけれど、いい曲なのである。しかし、交響曲で声楽、しかも合唱まで入れたのは禁じ手であるとは思う。歌詞で言っちゃったらダメだろ、とは思う。ただやったもん勝ち。

交響曲で声楽を本格的に取り入れて成功できたのは、あとはショスタコーヴィッチくらい?

しかしまあ、4歳児と音楽を聴くとおもしろい。旋律をふざけて歌ったりする。

音楽ってそんなものなんだと思う。あまり深く考えないほうが音楽は素直に感じられる。

4歳児は小学生になったらモーツァルトをバイオリンで弾きたいそうだ。それはわたしがモーツァルトばかり聴くからそうなっている。

きっかけはどうであれ、好きな作曲家がいるのはいいことである。そこをスタートにしていろんなところに行けるから。そして、いつでも戻ってこられる。

ちなみにわたしは音楽はモーツァルトとバッハがあれば十分なんだよね。ベートーヴェンはなくても大丈夫。

よく物事には、

「○○に始まり、○○に終わる」

という言い方があるけれど、そう言えるものが結局、いいものなんだと思う。それは一つでも自分にあれば、ずーっと満足できる。

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