結月でございます。
週に一度は愛娘シャンシャンがいる栃木の別邸に行くわたし。
1歳10ヶ月になって意思疎通もできるようになり、随分おもしろくなってきた。
栃木では料理はわたしがいつもしていて、そして食べ終わると食器を洗うために台所に立つ。するとシャンシャンが食卓のお皿を重ねてよちよちしながら持ってきてくれる。
教えてもいないのにやっていて、その姿がとても可愛らしい。
大人になっても食べた食器を台所に戻さない大人が普通にいるというのが不思議でたまらない。
しかし、こんなにも可愛いものなのかと思うほど可愛いけれど、わたしが東京に戻ろうとするとシャンシャンは大泣きする。それを振り切ってクルマのエンジンをかける。
来月からは保育園だし、さあ、これからますます大きくなるシャンシャンをどうしたものか。シャンシャンとはできるだけ一緒にいたいし、教えたいこともたくさんあるから、わたしが栃木で仕事ができればいいのだけれどね。でも、猫は東京にいるし、東京という拠点も大事なわけで。
とはいえ、栃木は住みやすい。いいところだと思うよ。
さて、そんな栃木の某所にはそれほど大きくない川があって、ここでは鯉が釣れる。ついでに言えば、鮭も昇ってくる。
この川の近くに市役所があり、書類関係の用事のために訪れ、端から川を覗くと鯉が何匹も悠々と泳いでいる。
それを見た結月妻が、
「鯉獲って、食べるよ」
というから、
「じゃあ、釣り具を家に取りに帰って、釣るか」
と、わたし。
そして、釣り具を持って再び訪れると、目の前に鯉が泳いでいて、これは中国料理にしたらうまいぞ!
シャンシャンを抱っこするわたしが釣り具を出そうとするも、結月妻は玉網を持って川沿いをずんずん歩いている。鯉を掬い取ろうというわけ。
玉網の柄は短いから届かないと思っていると、やっぱり届かないと言って戻ってきた。
子供の頃は中国でいつも魚はタモで掬ったり、手でつかんで獲っていたという。彼女の実家は長江の巨大デルタ地帯だから川が多く、だから肉料理よりも魚料理が主流となっている。
すると、
「川に入って獲るよ!」
と、ナナナナンント!アタシの奥さんは靴を脱ぎ、靴下も脱ぎ捨てると、ズボンの裾をまくり、玉網を持って川の中に ズカズカ入って行くじゃないか!
それを見たシャンシャンもすぐに真似をして靴と靴下を脱いで川に入ろうとする!
「シャンシャンはダメダメ!」
と、制止すると泣きわめくシャンシャンを抱っこするわたし。
そして、鯉を獲ろうとパンツが濡れても進むアタシの奥さん。
なんて、女なんだ!
必死に魚を追うも逃げられる。
結局、鯉は捕まえられず、素足で橋を渡って戻ってきた。そして、
「日本の鯉は狡い!」
と、ずぶ濡れになっての名言。
狡いってわけじゃないけど、まあ、玉網で掬い取るのは難しいと思う。でも、子供の頃は中国でそうやって魚を獲っていて、久しぶりに川に入って気持ちよかったという。
でもね、わたしはあなたのそんなところが好きなんだよ。考えるより先に行動する逞しい行動力。つべこべ言わずにともかくやってしまう行動力が頼もしくて、ずっと一緒にいる。
日本の女は自分が勤める会社がクソなのに転職することすら自分でできないようなのが多いのにね。
そんな行動力もまだ2歳になっていないシャンシャンにも遺伝してるらしく、シャンシャンまですかさず靴と靴下を脱いじゃうんだから。
しかし、行動力だけが先走って、後先考えないときは危ないからね。だからわたしみたいな人間が一緒にいないと駄目なんだよ。
さて、鯉は獲れなかったので、仕方がないから冷蔵庫のあり合わせでテキトーに料理は作った。
そして翌日。
鯉をゲットできなかった悔しさ、そして釣り具を持っていっていたのに川に入ろうとするシャンシャンを抱っこしていたから釣りができなかった不完全燃焼。
わたしが朝の7時に釣り具を持って単独、川へ。
「アタシがあんたの仇、取ったる!」
しかし、2時間粘るも釣れない。いや、実は釣り糸を垂れて3分ほどでアタリがあったのいかからなかった…! そしてその後はまったくアタリがないという屈辱。
またしても敗北感を抱え込んで別邸に戻り、またしても冷蔵庫のあり合わせで料理。
クソー! 鯉料理が食べたい!!
そして、シャンシャンとお昼寝をしつつも、鯉が釣れない屈辱で落ち着かない。釣りって、釣れないときの悔しさって、釣れないことには消化できないのよね。
シャンシャンがお昼寝している間に服を着替え、ひとり川へ向かう。
雨も降ってる。
しかし、雨に濡れてでも、この屈辱はなんとかしたい。
再び釣り糸を垂れるもアタリなし。釣れないのに釣りに出かけると、絶対に後でうるさいから鯉を持って帰る必要がある。シャンシャンにも食べさせたい。
雨が降る中、じっとするも釣れない敗北感が漂ってくる。15時半になったら諦めよう。そう思い、スマホの時刻を見る。
そしてラスト2分のところで、
「おおぉ!来た!」
と、一瞬で合わせると、グッと竿先が重い! よかった、かかってる!
水面を走る釣り糸を操りながら、リールを巻く。魚体が浮かび上がってくる。そして、昨日、ずぶ濡れになっても役に立つことがなかった玉網の中に鯉が入る。
「どんなもんじゃーい!」(亀田興毅風に)
クー! 釣れると興奮が収まらんよ。心臓がドキドキする。やったよ、やりましたよ!
しかもちょうど食べるにはいいサイズ。40センチないくらいかな。鯉は大きいよりもこれくらいが味がいい。大きいと味も大味になるからね。料理には最適。
バケツに入れ、クルマのトラックに積み、アクセルを踏む。
心ウキウキ。シャンシャンに鯉を食べさせられるし、ずぶ濡れになった結月妻の仇もうったし。幸せってこれだね!
シャンシャンも鯉を見て、大喜び!
そして、いよいよ調理。
鰓からハンティングナイフを差し込み、一気に〆る。魚はこれが大事よ。
と、鯉を丸ごと中華鍋で油で火を通し、野菜たっぷりでスープを作り、それで煮込む。わたしが作るのよ、もちろん。鯉の中国料理なら任せろ! だって、鯉が好きで、今までたくさん食べて来たから味のことはよくわかってる!
この鯉は臭みがまったくなく、身も柔らかで大変美味しかったね! シャンシャンもたくさん食べたよ。シャンシャンもわたしに似て、何でも食べる。2歳になってないのに好き嫌いがない。
それよりも中国人の結月妻は川魚料理が本場で好きだから、すごい勢いで食べてた。この人、美味しいと思ったものはほぼ一人で全部食べる。
さあて、また今度、釣りに行こうかな。12月に入ると、水温も下がって釣れなくなってくる。11月がギリギリかな。
でも、鯉は寒いほうが食べると美味しいんだよね。
しかし、釣りって釣れないときは本当にメンツがないからね。釣れない人間は馬鹿にされるか、呆れられて最低扱いされる。勝てば官軍。
ちなみに結月が使用した鯉の餌はこれです。
「ドーンと鯉」
鯉釣りの餌って、ネーミングがおもしろいものが多い。とにかく釣れそうな名前をベタに演出してる。
この「ドーンと鯉」は水を混ぜなくてもよく、すでにウェット状態なのでそのまま団子にできるのが魅力。
あと、食わせの餌は、いも羊羹。
定番ですね。
ええっと、結美堂ではこれまでにコンサートをたくさんやってきました。何回やったんだろう? 数えないとわかりません。
そんなコンサートをずっとやってくれた結美堂の功労者たるバイオリニスト、現在広島交響楽団コンサートマスターの佐久間(聡一)くんから連絡があって、来週コンサートがあるとのこと。
これです。
読売日本交響楽団のコンサートマスター長原幸太と一緒にやるコンサート。
幸太くんはマロオケメンバーでもあって、2016年のサントリーホール、そして今年の船橋公演でも一緒に仕事したね。
そのほか、マロオケでこれまた一緒だったビオラのヤス、つまり鈴木康浩、そしてチェロの富岡(廉太郎)くんもいる。
曲目はヴィヴァルディの「四季」という有名どころに加えて、ショスタコーヴィッチの2つのバイオリンとピアノのための小品っていうシブい曲も入ってる。
幸太と佐久間くんは確か大阪フィルの時にコンマスとセカンドトップのコンビだったんじゃなかったかな。気の知れた仲だね。
幸太はうまいからなぁ。彼はうまいよ。わたしはN響のマロさん(篠崎史紀)を継ぐ実力があるのは幸太だと思ってる。キャラ的にもね。
と、そんなコンサートが10月30日(火)にトッパンホールであるので、会社帰りで間に合う人はダッシュ! 19時開演です。
チケットはぴあやイープラス、そしてチラシにあるヤタベ・ミュージック・アソシエイツに電話してください。間違えて結美堂にはかけないでね。
ヤタベ・ミュージック・アソシエイツの矢田部さんとは大昔、バイオリンの巨匠イヴリー・ギトリスのコンサートで一緒に仕事しかけた。わたしの短い会社員時代にね。
結局、わたしの企画が上層部に通らなくてボツっちゃったけどね。音楽を知らない上層部の人を説得するのって難しいことだなって思ったよ。会社ってそういうものなんだなって、初めてわかった。だから、すぐに辞めて独立したんだけどね。
そんな思い出もありつつ、昔関わったひともこうしてコンサートをプロデュースしてるって思うと感慨深いものがある。そして、マロオケメンバーとも結果的につながっていて。
というわけで、来週の30日、トッパンホールであるこのコンサート、どうぞよろしくです!