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「栃木から来ました」って言えない…

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結月でございます。

クリスマスが終われば結美堂も自宅も東京にあるものすべてが栃木に引越し。

栃木には週一くらいで2年半前から通っているので、わたし自身、栃木に馴染んでいるし、それほどのインパクトは個人的はにないんですが、年明けに京都に着物の染めを見に行くツアーをことを考えたら、

「ギョッ!もしかしてヤバい?」

と思ったことがあった。

それは京都のどこかの店で食事をしていて、女将さんなんかに、

「どこからおいでになりはったんですか?」(京都弁)

なんて訊かれたときに、アタシは、

「栃木からです」

って答えなくちゃなんないワケ! 超絶ダセーじゃん! ゼッテー嫌!

「ごめん、栃木人」

東京からっていうならステイタスがあるけど、栃木からっていうのはダサい以外に何ものでもない。しかも都道府県魅力度ランキングで栃木は下から3番目という全国からシカト状態だし。

アタシは栃木のことが好きだけど、でもアイデンティティはまだない。アイデンティティは東京だし。アタシのスペックは都会だし。

つまり、どこかに行って「栃木から来ました」って言ったら、フツーにアタシが栃木人だって思われるじゃん! 違うし!

と、重ね重ね、わたしは栃木のことが好きなんだけど、栃木人っていうアイデンティティがないし、スペックは都会人だから勘違いされるのが嫌なのっ!

アタシが自分が栃木から来ましたって自信を持って言えるようになるのは、愛するとちテレでレギュラー出演を果たすとか、そういう壮大な夢を実現できたとき。

今の状態では、スペック都会人なアタシが田舎者に思われるじゃん! これは困るよ!

まあ、京都なんて古臭い街だから、今では大した都会でもないくせに未だに東京を下に見るプライドがあるけどさ。でも、京都に関してはアタシは一応、京都出身だから偉そうにできるワケよ。

ところがもし、もしよ、そういうアドバンテージがない土地に行ったときに、

「栃木から来ました」

って言うのがスペック都会人とアタシとしては、結構な屈辱なのよ。

だってさ、銀座に13年ほどいて、銀座の住民として一体アタシはいくら東京都中央区に金を落としたって思う? 田舎とは比べものにならないほどだよ、それは。

と、そんな馬鹿馬鹿しさにもう東京もいいかなって気になってるのは確かだけど、実績としてあるものが理解されず、アタシは田舎から来たって思われるのはスペックは都会人としては安易に認められない。

同じことが昔にもあった。

それは熊本から東京に家を探しに来たとき、東京に住む友達と原宿のバーに行ったときのこと。

すると、バーテンの女は、

「今晩は東京の夜を楽しんでください」

って言ったワケよ!

「クー! 超ムカつく! アタシは九州の田舎の人間じゃねーぞ!」

だってさ、どうせそのバーテンなんて、地方出身者なわけじゃん。それにアタシは大学だけ熊本に行っただけで、熊本人じゃないし。上方の人間で、推定地方出身者のバーテンよりアタシのほうがスペック的に都会なはずなワケよ。しかもアタシはフランスにもいたし、パリの街は地図なしで歩ける。それなのに熊本人に思われるのがすごく嫌だった。

かと言って、

「いや、あの… 熊本出身でもないんで…」

なんて言うのも言い訳がましい。

というわけで、ずっと都会人として生きてきたアタシにとって、

「栃木から来ました」

っていうのは、いくら栃木のことが好きでもアイデンティティ的にすごく嫌なわけ。

でも、アタシは郷土意識もないし、京都のこともなんとも思っちゃいない。だから、出身を訊かれたら、

「パリです」

って自分にとって最もアイデンティティがあって、最も愛している街を答えるようにしていたら、みんな真に受けて後から説明が面倒になった。

この問題はアタシの愛車にもあって、引っ越すと自動車のナンバーが現在の足立ナンバーからナナナナント!宇都宮ナンバーになってしまうのだ!

まっ、足立ナンバーも大したことないんだけど、宇都宮ナンバーなんかで東京を走ってたら、田舎者だと思われちゃうじゃん!

しかも、アタシの住む場所は宇都宮でないのに宇都宮ナンバーって、まるで宇都宮の属国みたいな扱いでこれまたムカつく。

宇都宮が嫌いってことでなく、宇都宮の下として一括りにされるのが納得がいかないワケよ。

腹立つからずっと足立のままにしておこうかな。

と、とにかくスペック都会人として、都会で生きてきた人間として、

「栃木から来ました」

って、田舎者だと思われるから困るなって。

だって、多分、栃木県知事だって東京のバーで飲んだとして、

「栃木から来ました」

って言ったら、田舎者扱いされるだろうし、

「知事です」

って言っても、

「お仕事、大変ですね」

くらいにスルーでしょう。

これもまあ、住んでいくうちに慣れるとは思うけど、わたしは栃木人にはなれないよ。いくら栃木が好きでも栃木人にはなれない。育ちも違うし、よそ者だしね。

アイデンティティは気にしないほうだけど、今のところスペック都会人であることを気にしてる。

それに栃木人になっちゃいけないのは、仕事をするなら栃木を客観的に、お客様目線で見なければならないから。

地元と同化したらおもしろいことができない。田舎の町おこしみたいなダサいことしか思い浮かばなくなる。

よそ者の視点があるからこそ、その土地の魅力を発見できるわけであってね。

なんて言いながら、住んでみると、自信満々で、

「栃木から来ました!」

なんて言ってるかもしれないけどね。

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