着物に定価はないが、「適正価格」はある!!
結美堂の結月です。
着物というのは定価がない商材で、ですから販売店で値段が異なります。
販売店の立地がどこにあるか、何人の従業員を雇っているかなど、店舗によってコストは異なるので、最低これくらいの値段で売らないと店が潰れてしまうというラインは店舗事情でまちまちだからです。
しかしながら、相場というか、これくらいが適正価格だろうという幅はしっかりとありますが、そこから逸脱しているところが数多くあるのが事実です。
着付け教室も大きいところはとんでもない価格で販売していることが多く、着付けを習うのは無料や安い設定でも、そこで開催される即売会のような場では適正でない価格で売られていることはよくあります。
ネット通販などで極端に安いものがあったりするのは、倒産した呉服店から処分品として流れたものであるケースがよく見受けられます。
とにかく、着物業界のやり方は昔から問題になっているのですが、需要が小さいせいか改善されないままです。
92%割引の袋帯なんて普通はあり得ない!!そのカラクリは!
例えば、こんなチラシがあります。
これは東京の大手呉服店のものです。西陣の袋帯ですが、参考上代がナント!150万円で、それが驚くことに92%割引になって、118000円になるとのこと。
普通に考えて、9割以上の値引きが異常です。
新車の軽自動車が12万円前後まで値引きされたような感覚でしょうか。
この帯がどこで織られたものかを見ると、上代で150万円などあり得ません。というか、機械で同じ図案で何本も織っているものがどうして150万円になるのでしょう?
帯に使われている糸や絹やボリエステル、レーヨンなどですが、原材料費からしてこんな値段になる道理がありません。
仮に機械織りでなく、手機であってもこんなにはしない。つまり、作っている職人がかけている原材料費、そして生活費(仕事料)、さらには機屋の格を考慮しても150万円というのはボッタクリというか詐欺です。
これもそうですね。150万円のものが91%割引で、128000円になっています。
しかし、この店はまだマシなほうかもしれません。なぜなら、このセール価格は一応、帯の適正価格に収まっているからです。
だから、最初からこの値段で値付けていればおかしなことではない。ところが参考上代があり得ないくらいの値段であり、強烈な割引を演出するために150万円に設定しているやり方です。
とはいえ、チラシ掲載のセール価格でやっと適正価格であるわけだから、セールでないときは一体、この帯をいくらで売っているんだろう?という疑念は残りますが。
しかし、この参考上代の値段で本当に売ってしまっている店もあります。買った方はすごくいい品物を思い切って買ったと思われていますが、実際は普通のものです。
業界の悪しき商習慣を改められないか?
ともかく、こういうことが着物の業界ではまかり通っていて、それでも売れてしまっているという事実も問題です。
こうした商習慣を改めないと結局は着物の客離れが起きたり、品質の悪すぎるレンタル着物に流れて、新規の生産がますます減少し、着物という文化そのものがなくなってしまうことになるでしょう。
この他にも悪徳すぎる販売をしている事例には事欠かない呉服業界ですが、真面目にしているところもあるにはあります。ただし、真面目なところほど、派手な情報発信はしないので目につくことがあまりないのです。
むしろ着付け教室になどもステルスマーケティングなキュレーションサイトやランキングサイトで大々的に目立っているところほど危ないところばかりです。
派手さは真面目さから演出されないから、どうしても派手にするためには不真面目でないとできないわけですが、どうにか消費者の皆様にもそのあたりは見抜く力を持って欲しいとは思います。
しかし、着物は初心者にはその品質が大変わかりにくいものなので、消費者にそれを要求するのも現実的でありません。
ですから、業界が健全にならない限りは詐欺的なやり方は横行し続けるということです。ただし、結論から言うと、着物はそれを改めようとする気持ちがない業者が扱うことが多いので、根本的に健全になることないでしょう。