結月です。
年の差がある愛娘から最新情報を教えられることが多くなった。『鬼滅の刃』もそうで「無限列車編」が劇場公開されているときに愛娘から、
「たんじろうだよ」
と言われ、
「たんじろう?誰やねん、それ」
というところから始まり、ちょうどテレビで鬼滅の劇場版を三夜連続で見てから、DVDで改めてテレビ版も全部見たわけである。繰り返し見たから、わたしはすっかり鬼滅には通になった。
そして今度は、
「あれ、アーニャだよ」
と言われ、
「なんやねん、アーニャって」
と、しばらくは放っておいたのだが、Amazonプライムのトップ画面で、
「これ、アーニャだよ」
というから見てみることにした。そのタイトルが『SPY×FAMILY』だとも知らずに。
すると、
「何これ、おもしろいじゃん!」
と、ハマってしまったわたし。
とりあえず今日までに愛娘と一緒に第1クールの13話まで見た。
『SPY×FAMILY』はまずオープニングのセンスがすごくいい。それに主題歌もすごくいい。
オープニングも本編もあれ、実は絵的にはものすごく古いことをやっている。それを古く感じさせないようにしている。オープニングの最初なんて70年代のアメリカのポップなものだし、機関銃の描写はあれ、アルカポネ時代のシカゴでしょう。
クレジットの書体は大正時代っぽいものも感じる。だからあれを作った人って、きっとものすごく映画を見てる。サイレント時代の映画から80年代くらいまでをよく知っていて、それをうまく今、新鮮な形にしていてセンスがいい。
そしてストーリーもおもしろい。仮想家族っていうのはありがちであるけれど、父がスパイで母が殺し屋、そして子供が超能力者というバラバラなセッティングがコメディを生み出す。
一番いいなと思ったのは、セリフが説明的であるのにユーモアが溢れていて鬱陶しくないこと。
今はなんでも説明しないと伝わらない時代だから、何事においても説明過多で、鬼滅の炭治郎なんてウザいくらいにセリフで説明する。
これは行間を読む能力が今の日本人になくなっているせいで、だから沈黙の力強さを使えない。
そんなわけでロイドさんの内的な独白もやたらと説明的なのだけれど、それはひとり語りのジョークにもなっていて笑える。そこにボケ役のヨルさんがいる。
ユーモアが乏しくなったこの時代にあれだけユーモアを盛り込めるのはなかなかできることじゃない。笑いとはその裏に皮肉がある。社会への風刺がある。ところがコンプライアンスなど面倒なことが多くなったがために風刺が風刺と捉えられなくて、冗談が冗談で通じない。そうなると風刺は難しくなるのだけれど、『SPY×FAMILY』はさりげないのに実はドキつい風刺をしている。
これがあるから描写は実は古いものでも古臭く感じないわけで、古いけど古くないセンスでもって「今」を描いている。
セリフのやり取りは今の時代の行間なしの直球だらけであるが、そこに微妙なズレが仕込まれていて笑いが生まれる。
そういう直球だらけの凸凹なやり取りは、きっと古い世代、60代より上、下手すると40代でさえついていけないものかもしれない。
おそらくは今の20代くらいの感性がぴったりな世界観で、それは見ているとおもしろい。
そんなアニメを5歳児から教えてもらって、わたしは脳ミソを更新し続ける。
ところで2日前、わたしは5歳の愛娘に空手の正拳突きを教えていた。
というのは、体が鈍って重くて仕方がないので、おもむろに正拳突きの基本を繰り返したり、蹴りをしたりしていたのである。実はわたしは小学生低学年の頃からやりたくもない空手をやらされ、嫌々ながらに道場に通いながら、結果的に黒帯を取得したというアホなのである。
なぜアホなのかというと、あれだけ嫌ならやめればいいのにやめると言い出さずに続けてしまった膨大な時間の無駄のせいである。
と、一応これでも黒帯まで取ったから突き、蹴り、受けの基本形は今でも染み付いていて、形の「バッサイダイ」は得意としていたから今でも覚えている。
そういうわけで運動不足のストレスから空手の突きや蹴り、受けをやり、バッサイダイまでやったら息切れしてソファに倒れ込んでしまった。空手をやっていた頃は息切れなどしたことがなかったのに、年月が過ぎれば情けない限りである。
そんな空手を眺めていた愛娘はおもしろがって真似をしている。しかしその突きがいかにもガキで、形がなっていない。
黒帯所持者としてはそれを見かねてレクチャーする。
まず脇を締める。拳はしっかりと握り、親指は中に入れない。そして突きの際には上向きの拳から回転を加え、標的に当てるとすぐに戻す。引き戻すスピードが大事なのである。
と、あしたのジョーに教える丹下段平さながらに5歳の女の子に正拳突きを教える。
するとなかなかかたちになってきた。試しにソファの背もたれに向かって突きをする。サンドバッグの代わりである。するといい感じの音がする。
そして、その正拳突きをわたしに試す5歳児。
「痛てっ!」
と、小さな拳なのに結構な攻撃力である。
次は蹴りをやるが、それも形がなってない。突きと同じ要領で教える。すると、またわたしに蹴りを繰り出す。
この攻撃には下段受けで受けなければならない。5歳児の蹴りを下段受けで弾き飛ばす。
「よし、これで悪い人に絡まれても大丈夫だね」
と、護身術として身につけさせた。将来を考え、正拳突きと蹴りは忘れないように日々、教え込んでおいてもいいかもしれない。
護身術と言えば、YouTubeでファンになってしまったゼロレンジコンバット(零距離戦闘術)の稲川義貴で、彼は本当にすごい。
このゼロレンジコンバットはもしもの時のために、女性であるなら少しは身につけておいたほうがいい。
ちなみに襲われたときにパニックになってしまうと余計に逃げられない。ここは冷静になり、相手の顔面を捉える正拳突きのモードにならなければならない。
また頭に血が昇ってカッとなったとき、がむしゃらに相手を叩いたりするのでは相手を倒すことはできない。それはただ腕を振り回したり、取っ組み合いになるだけである。
もし冷静に空手の正拳突き、短距離であれば裏拳を繰り出せば、難なく相手をやっつけられる。
ムカついてワー!というのはよろしくない。しっかりと構えの姿勢に入って、相手の動きを追い、ここぞという瞬間を狙って正拳突きをするべきである。
というわけで、愛娘に護身術を教えられるという段階になって、あれほど嫌でしかなかった空手がやっと役に立ちそうである。
そんなことをし終えて、翌日、愛娘と『SPY×FAMILY』を見ていたら、小学校に入ることになったアーニャのために仮想家族での母、ヨルさんがパンチを特訓する。ヨルさんは裏の仕事が凄腕の殺し屋であるから、実はカッコいいほど強い。
そんな母からパンチの繰り出し方を教わったアーニャ。それをいきなり同級生の男の子に使いぶっ飛ばしてしまう。
これを見て、
「ブハハハハハ!これ、昨日のアタシたちとおんなじだー!」
と、愛娘と大感激。
まさか正拳突きを娘に教えることがアーニャとシンクロするとは思わなかった。
ちなみに『SPY×FAMILY』はみんな魅力的なキャラだが、わたしはヨルさんが一番好きで、ああいう凄腕の女にシビれてしまう。それに声と話し方が聞いたことあると思ったら、それは鬼滅の胡蝶しのぶだと気づき、鬼滅でもわたしはしのぶが一番好き。
とまあ、『SPY×FAMILY』にすっかりハマってしまったが、第2クールがちょうど今、放映中らしい。途中から見てもわからないし、土曜の夜遅くだから、これは終わってからAmazonプライムでまとめて見ることにする。
ちなみにうちの愛娘はアーニャのモノマネが爆裂にうまいのである。