結月です。
宇宙は無重力であるから、ずっと無重力の中でいると筋肉が衰えてしまい、地球に戻ると宇宙飛行士は立つこともできない地いう話を聞いたことがある。
それも昔の話で、今はそうならないように宇宙ステーションで筋トレをしたりするのだろうか? しかしそれでも無重力であるから筋肉は衰えるに違いない。
そんなことを思い出したのは、栃木に来てからクルマ生活になってしまい、ほとんど歩くことがないせいでもともと筋力がないのにさらに筋力がなくなって、脚はまるで海綿状組織になったようである。
立ち上がるときは気合を入れねばならず、如実に筋肉が衰えている。
思えば歩くのは玄関を出て駐車場までの十数メートル。そして保育園の駐車場からエントランスまで数十メートル。それからは結美堂の駐車場から入り口までの数メートル。あとはトイレに行くかといった具合で、オプションとしてスーパーの店内を歩くことくらい。無論、スーパーにもクルマで行くから歩いてスーパーに行くことはない。まるで栃木の生活は無重力状態である。
東京にいれば最寄り駅まで十分以上歩き、駅に着けばホームから改札まで歩き、乗り換えで歩き、とにかくよく歩く。
公演前はリハーサルが重なったのでいろんな場所に赴いたがその都度よく歩くもので、東京だとそれは当たり前だったことが田舎暮らしでギャップを感じる。
とにかく田舎は徒歩だとスーパーやコンビニに行くのも遠くなり、いや歩こうと思えば歩けるけれど、なんか歩く気がしない。クルマで行こうとなってしまう。
東京はクルマで移動するのが億劫な都市構造であり、駐車場を見つけるのは大変だし、道は煩雑だし、狭い道に歩行者やチャリは多くて危なっかしく、クルマが不便なのである。
栃木に来て驚いたのはコンビニやドラッグストアの駐車場が広大である点で、さらに一台あたりの面積も広い。運転が下手くそで斜めに駐車したって隣とはぶつかりそうにない。
ところがこの間、上野のド真ん中のパーキングに駐車すると隣との距離がギリギリなほど狭い。狭い場所にできるだけたくさん駐車できるようキツキツに設計されているから、栃木の広大さに慣れるとちょっとびっくりする。東京にいる頃はそれが普通でいたのに、今度はそれに驚く。
というわけで東京は駐車場の事情からしてクルマでは動きにくく、やはり地下鉄が山手線となる。
だから、東京はよく歩く健康的な街であり、街そのものがフィットネスクラブみたいなものである。
性格は引きこもりのくせに移動が好きなわたしは田舎にいると行くところがなくてどうも不健康になり、だから週末にあれば4歳の愛娘をどこかに連れて行くわけで、そうでもしないと腐ってしまう。
しかし、東京で4歳児向けのものがあるかといえば、ちょっと思いつかない。あるにはあれど、子供が楽しい街ではない。そういう点では栃木のほうがクルマで出かけやすいし、遊園地などなど子供が楽しめる場が充実している。
あとはやはり病院であり、東京は病院が大も小もたくさんあれど、意外と電車を乗り継いだりと面倒で病院は疎遠になりやすい。
田舎は病院の駐車場も広く、クルマでサッと行ける。だから田舎にいるほうが病院へ生きやすいため、体のケアはしやすいかもしれない。
そもそも東京は忙しい街だから、病院へ行くなんて悠長な気分になりにくい。
と思えば、筋力は衰えど、病気に関しては田舎にいるほうが病院に行きやすい都合、健康を保ちやすいとも言える。
さて、ガチな文化系で、そもそも運動をしたことがないわたしは肉体的な体力は情けないレベルである。
しかし、山登りを始めたおかげで年に2度ほどはそれに備えてトレーニングをする。そのおかげで一年の間に体をしっかりと動かす機会がある。
しかしながら、今年は秋の山登りが部員のスケジュールがうまくいかず中止になってしまったので、5月に一度登ったきりである。
そのせいもあって筋力の衰えは激しく、やはり年に2回は山に登らないと足腰が海綿体になって本気でヤバいなと思う。
ガチな文化系のくせに肉体の重要性に気付いたのは奇跡と言ってよろしく、それに伴って考え方も昔とは随分と変わった。
ガチな文化系でありつつも、ガチな文化系の考え方には嫌気がさして今はどちらかと言うと理科系な考え方になっていると思う。
なので文化人なる人をメディアで眺めたりすると、どうも頭でっかちで、現実を知らないお花畑に見えてしまって、
「お前ら、ちょっとは運動せいよ…」
と、どの口で言ってるんだ?という説得力のなさで上から目線になりつつも、自分の肉体は軟弱極まりなく、しかし頭のほうはそんなにお花畑じゃないよ、と自覚する。
運動しないと考え方がどうしても暗くなる。だから得てして批評家という人たちは運動不足なのである。
陰鬱な性格だったり、愚痴ばかりこぼしていたりしているならば、肉体を忘れているのかもしれない。頭でばかり生きているのかもしれない。
だから、もっと肉体を意識して、病院では気持ちよく検査を受けて、年に2回は山登りをする。
精神を変えるなら肉体を変えたほうが早い。
再び、どの口で言ってるんだ?と思いつつ、不意に部屋の中でスクワットをやってしまうのである。