結月でございます。
猫は人にしか「ニャー」と言わないらしい。動物研究によるとそういうことらしく、猫とずっと一緒にいるのにその事実を今更ながらに知って驚いている。そして、猫同士では「ニャー」と言わないらしい。
言われてみればそうだ。うちには3匹の猫がいるが、猫同士で「ニャー」と言い合っているのは見たことがない。
つまり、人が存在しない場であれば猫は「ニャー」とは鳴かないのである。猫は無口であり、時折喧嘩するときに相手を威嚇して、
「シャー!!」
とやるくらいしか声を出さない。
猫は主に飼い主に向かって何かを訴えかけるときにだけ声を出す。この事実はわたしにとって衝撃的だった。
ちょっと留守をして帰ってきたときは、
「ニャ〜」(待ってたよ〜)
と言い、お腹が空いたときは、
「ニャー」(お腹空いだんだけど…)
と催促をし、寝転がっているとおもむろに胸の上に乗っかってきたかと思えば、
「にゃ〜」(好きだよ〜)
と、顔をペロペロ舐めてくる。そして膝の上に寝ている猫を立ち上がる際にどかせようと抱っこすると不機嫌そうに、
「ニャー」(何すんだよ)
と唸る。
あとは猫なりにいろんな気持ちがあって、いろんな「ニャー」を発しているのだろう。
ともかく、猫は人にしか「ニャー」と言わない。人としか話そうとしないのである。
ここが猫を愛おしく思わせるところなのかもしれない。
犬だとよその犬がすれ違ったときに激しく、
「ワンワン!」
と吠える。しかし、犬は人間にも「ワンワン!」と同じ声で吠える。
どうやら猫は犬と違って、人間に語りかける動物のようだ。
それでいて猫は言葉少なく、しきりに鳴くことはなく、総じて静かにしている。余計なことは言わない。
わたしは人間嫌いの猫好きであるけれど、猫が静かであるところが好きなのかもしれない。となれば、猫好きは人間嫌いなのかもしれない。
思えば人間は喋りすぎる。
ベラベラと喋りすぎる。
無駄なことばかり喋りすぎる。
余計なことを喋れば、余計な喋りで応戦する。
言ってくれなきゃわからないことがある。
でも猫は余計なことは話さない。
それでいて膝の上にいたり、胸の上で寝ていたりする。
人にしか「ニャー」と言わないのに、最低限の「ニャー」。
人間も最低限の言葉だけで済めばいいのに、と思う。
人間の社会は言葉で説明しなければならないほど複雑で面倒なことばかりなのだ。
猫といるときは一番幸せ。
その幸せは余計なことをしなくていい心地よさが猫にはあるからだろう。