結月でございます。
緊急事態宣言で飲食店でのお酒がNGになるらしい。
となっても、普段は外食することもなく、あれだけ飲んでいたお酒も今ではほぼノンアル生活になった健全な人であるわたしは昔のようにバー通いをするわけでもなく、酒類提供禁止も困ることがない。
しかも今は栃木にいるから居酒屋だって行けばお酒は飲める。
しかしまあ、東京や大阪、京都などお酒が提供されることで大きな経済が回っている都市で、これがNGとなるととてつもない経済ダメージは覚悟が必要で、飲食店も協力金をもらえたとしてもさすがにここまで続くと店をやっていくモチベーションが途切れてしまって、店主が協力金でヤケ酒モードで廃人になるなんてこともあるかもしれない。
今までは生き残ろうと耐えてきた精神だったのが、そのモチベーションがプツリと切れるとやる気がなくなって廃人になる。人間とは「やる気」を一度喪失すると、それを取り戻すにはよほど革命的なことが自分に起きないとできるものじゃない。
さて、わたしのようにノンアル生活でも大丈夫な人間はそれほど打撃はないけれど、昔のわたしみたいにバッカス認定で毎日飲むのが基本な人、つまり飲むことがライフワークになっている人にとってはダメージが大きい。
とは言え、以前のわたしはお酒が好きとは言っても一人で飲むのが好きだったから、それはそのまま家飲みに移行できる。
しかし、みんなでワイワイ騒ぎながら飲むのが好きな寂しがり屋系の人は外で飲めないと辛い。あとは日々のストレスを友達と飲むこと、キャバクラで飲むことなどで発散しているタイプもきつい。
日々飲むことが習慣になっている人は基本的に飲まないという選択肢がない。それが極端になると電車の中でワンカップを飲んでるおっさんになる。
今回、お酒が外でNGとなるとどうなるか?
ワイワイ騒ぐのが好き系の人は店には行けないからどこか友達の家に集まって飲むだろう。
となると、友達同士の家飲みのほうが換気も悪く感染リスクは高いから、飲食店をNGにしてもそれほど感染者数は下がらないかもしれない。
あとは普段外で飲んで酔っ払って家に帰ってきたらそのまま寝てしまうような人は家飲みになり、会社のストレスを外で処理せず家に持ち帰り、女房相手にクダを巻き、それを理解しないどころか、馬鹿にする女房にブチ切れる。
要するに外で飲む行為はストレスの解消であり、楽しみであるのだから、それをいきなり奪われると人間は荒れやすい。
お酒にストレス解消を求めるのは愚かだというのは正しいかもしれないけれど、それをしないで済むほど人間は簡単でない。
思いのほか、社会の秩序というのは飲酒などのガス抜きのおかげでまあまあ保っているところがある。
今回はGWが終わるまでだから、禁欲期間はそこまで長くはないため、極端には荒れないだろうが、それは表に出てこない部分、家庭内などに出てくる可能性はある。
ともかく、政府や地方自治体が要求する制限はどうも的外れで、効果が疑わしいというのが概ねの意見であって、わたしも同じ。
日本的事情のせいか、コロナ病床を増やせない混迷。
人工呼吸器だって政府が決めれば大量生産はできただろうし、それを使用する看護師などのスタッフもスキル習得の育成体制を早くから整え、報酬面でも優遇していれば1年もあったのだから実現は理屈的にはできていたと思う。
しかし、それをしなかったわけで、やれることは外で酒を飲むなというのだから、日本にいることがちょっとがっかりしてしまう。
望んでやってきた栃木県ではないけれど、結果的には感染地域でないことでそんなピリピリしなくて済んでいるのは幸運だったと思う。
飲食店が酒を出すなと言われるのは、わたしの仕事であれば「着物は着せるな」「バイオリンの音出し禁止」と言われるのと同様であるから、これは辛い。協力金をもらえたとしても辛い。自分の存在理由が否定されるから。
だから、空っぽの冷蔵庫、誰もいない厨房を眺める飲食店の店主は途方に暮れるというより頭が空白になるに違いない。休業とはそういう虚無がある。
存在の耐えられない軽さが飲食店に押し寄せる。
きっと飲食店を始めた人は、お客さんがワイワイ騒いで、お酒を飲みながら楽しんでもらえるのが好きな人たちだ。それが酒類NGや黙食などを言われたら何のためにその店があるかわからなくなる。
でも思えば、わたしだって同じだった。
春の陽気の中、みんなで着物を着て出かけようと言えないのだから。
そうなると、いい着物を仕入れる目的がなくなる。
幸いわたしには手のかかりすぎる4歳の子がいて、着物のニーズがなくともあれやこれやとやることがある。
そのおかげでメンタルに虚無は訪れていないわけで、もしあの子がいなければ虚無の中にいたかもしれない。
ノンアル生活になれたのもあの子がいるおかげだ。酔っ払っていては小さな子供の相手ができないから。
お酒を飲まなくてもいい体質にしたおかげで得することもある。
しかし、飲食店は無意味とも言えそうなパーテーションなどの感染対策にも経費をかけたのに結局は休業というのはあまりにも気の毒すぎる。