結月でございます。
保育園が休みなお盆。さて、今日はどこに行く?と3歳の愛娘に尋ねつつ、
「そうだ、中禅寺湖の遊覧船に乗せたらいいかも?」
と、思い立ち、
「船、乗りたい?」
と訊くと、
「のりた〜い!」
と大喜び。じゃあ、奥日光まで行くか。
気温35℃の晴天の中、代車のフォルクスワーゲンにエンジンをかけ出発。
日光市の杉並木付近にある結美堂山ガール部御用達のファミリーマートに立ち寄り、ラッキーストライクとクールを買う。
これはわたしが吸うのではなく、ランチに訪れる結美堂御用達の奥日光のホテルスタッフのためなのである。
先月も宿泊で訪れた時、タバコをホテルスタッフからもらって吸うという乞食根性でチェーンスモークを楽しんだ。
しかし、タバコというのは自分で買ってもあまりおいしいものでなく、やはり人から恵んでもらって吸うのがうまい。
というのはわたしだけかもしれないけれど、タバコは他人からもらわないとおいしくないから、わたしは自分用は買わない主義。
これはパリの街を歩いていてわかったもので、向こうでは道ですれ違いのの見ず知らずのおっさんが、
「タバコある?」
と声をかけてくるのが普通。
セーヌ川にかかる橋の上のベンチでタバコを吸っていると、いかにもパリらしいだらしのないおっさんたちが集まって来て、タバコ頂戴と言ってくる。そうやってタバコを渡したり、もらいながらスモーキングを楽しむ。
他人の手汗でちょっとしわくちゃになったタバコはなんかその人の生き様が染み込んでいるようで、それをもらって吸うとうまいのである。
そういえば、パリとは全く異なる趣ではあるが、中国もタバコを挨拶代わりに渡す習慣がある。だから中国でも他人のタバコをたくさん吸ったっけ。
と、他人からタバコをもらうのはパリ仕込みなわたし。
さて、クルマが日光中心部に差し掛かり、本格的に日光の「ゾーン」へ入ると、ボタ、ボタ、ボタッ!といきなり大粒の雨が!! それはほんの数秒で土砂降りに!
まただよ。これだよ。さっきまでのピーカンが大雨だよ。
結美堂山ガール部の部員たちはもう何度も経験しているこの超自然的風景。わたしは神がかり的な雨女で、それも日光との相性がグンバツで、どうも日光の龍神様はわたしに反応するらしいのである。
この雨の降り方は本当に神がかった感じがする。普通に雨が降って来たよね、というのではなく、ブワッと降らせてやった的な雨なのである。すなわち、その雨には「意思」があって、それは龍神のものなのである。
そんな龍神様からの歓迎の雨もいろは坂に入る頃には止み、またピーカンに戻った。
でも、この非力なフォルクスワーゲン・ポロって、いろは坂登るのかな?
実際には登ったけれど、クルマに向かって、
「がんばれ〜!」
と言いながら登った感じで、踏んでも踏んでもそれ以上は加速しない。
愛車の2.5リッターV6エンジンに慣れていると、このトロさが新鮮でもあったが、やはり非力なものは運転しても楽しくない。
と、そんな具合で奥日光に着くと、戦場ヶ原前の三本松などかなりの人だかりだった。日光の東照宮付近もなかなかの数の観光客が来ていた。
「やっぱ、これくらいは来てもらわないと、商売上がったりどころか、破産だよね」
と思いつつ、とにかくコロナ騒ぎが始まってからの日光はまったく人がいないという中性子爆弾で破壊されたような風景になっていて、心配していた。
ホテルで食事を済ませ、戦場ヶ原に戻り、愛娘とソフトクリームを食べた。炎天下でソフトクリームは予想より早く溶けるから、急いで食べた。
さらに下り、中禅寺湖のいつもの駐車場に行くも、これまたほぼ満車状態でかろうじて一つの空きを見つけた。
遊覧船を見た3歳児は並ならぬ興奮ぶりで大喜びで船に乗った。
やはり、人が喜ぶ風景というのはいいものなのである。
仕事や商売も人が喜ぶことを選ぶと幸せになれる。
そして、二荒山神社にお参りをして、華厳の滝へ。滝の写真を見せたら、「行きたい、行きたい」とこれまた興奮していたから。
すると、華厳の滝駐車場も満車で、路上で順を待つことになった。しかし、その反対側の歩道ではおっさんが誘導している。これは自分の敷地を駐車場にして華厳の滝駐車場より20円安くしているのである。
さっとそちらへハンドルを切り、クルマをとめる。おっさんに金を払いながら、
「やっとお客さん、戻って来たね〜」
なんて言ったら、
「いや、まだまだ。うちはヤバいよ。もう本当にヤバい」
とのことだった。
この混雑はお盆限定のようで、平日などはからきし駄目なのだろう。
現実的なコロナの死亡者数とコロナ騒ぎによる経済破壊のバランスがあまりにもおかしくて、このことをかなり前からわたしは口を酸っぱくして言っている。
マスコミの報じ方がかなり悪質で、それによってコロナに感染する現実的な問題よりも、目の前にある経済的破綻による悲惨のほうが現実的に迫っている。
ついでに言えば、国も行政も給付金などもう一度やるほど金はないから、おそらく何かしらの税金での回収を試みるだろう。
依然、餅を喉に詰まらせて死ぬ人よりも少ない死亡者の日本で、さてどうしたらいいかを国家規模で考えなくちゃいけない。それも急いで。早急に。
中禅寺湖の大自然の中で、マスクしている人が多数なんていうシュールな景色をおかしいと思わないところにこの問題はあるのだよ。ちゃんと科学的な考えができてないから、必要ないところでもマスクばかりになる。
さて、そんなコロナで経営がヤバいおっさんの駐車場から華厳の滝へ。ここのエレベーターで下まで降りるのは数年ぶり。
毎秒1.5トンの水が落ちるその壮大な滝に釘付けになる3歳児。随分気に入ったようで、結構な時間、滞在した。
ところで日光を開山したのは勝道上人で、それは8世紀のこと。
何度も登頂して失敗したわけだけれど、勝道上人がようやく奥日光にたどり着き、この華厳の滝を見たときは度肝を抜かれるほど感動しただろうなと思った。
しかし考えてみれば、華厳の滝のおなじみの見え方は、100メートル下の崖下に降りなければならない。となれば、勝道上人は華厳の滝の滝音は聞いても、ほとんど見てはいなかったとなる。
おそらく中禅寺湖から流れる滝があるのだろうなという程度の認識だったのではないか。
そんなことを思いつつ、3歳の愛娘の手をつなぎながら、再び地上へ戻ったときは観光客は少なくなり、黄昏時だった。
奥日光はこの時間を超えると、すっかり人がいなくなる。
お土産物屋の前を通りかかると、口笛で蛍の光を吹きながら店のシャッターを閉めているおっさんがいた。
経営が切迫しているという駐車場にはもう数台しか残っていない。
「さあ、帰るか」
と、いろは坂を下っているうちに後部座席からはイビキが聞こえ始めた。
国道4号線に入ると、東京方面では雷で空が光っては割れていた。