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寄付が成り立たない時代〜オーケストラを例に〜

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結月でございます。

コロナ騒ぎの影響で多くの業種が経営的に危なくなっている。それは個人の飲食店から世界的大企業に至るまで広範囲。

わたしが仕事としてやったコンサート関連。それはクラシックオーケストラだけれど、やはり本格的に存続が危ないのか、寄付を募るようなところがたくさん出てきた。

コロナがなくてもオーケストラは会員が支えていたようなところもあるし、そこにチケット収入がゼロになると、維持することがほぼ無理であることが確定する。

しかし、社会全体の経済が戦後史上初というくらいの落ち込みをするこの状態で、そもそも寄付が成り立つのだろうか?

音楽のニーズは消費の中でも最も遠くにあるもので、つまり衣食住という現実的なものではない。なくても死なない。

社会全体の衣食住が脅かされている時期に、なくても死なない音楽が寄付を募ってもそれほど大きな金額が集まるとは思えない。そして、集まり続けるとも思えない。

たとえ感染者が減ってきたとしてもコンサートの開催はすぐにはできないし、できたとしてもソーシャル・ディスタンスなどと言われては、コンサートホールを満席にできない。なぜなら、空席を設けて距離を取らなければならないから。

となれば、コンサートをやってもそもそも収益が上がらないし、むしろ開催するほうがコストがかかることにもなる。

ネット配信を有料化しても、無料に慣れたネットにそう簡単に金を払うとも思えないし、ノートパソコンやスマホでライブ映像を見たところで感動するだろうか? 感動しないものに金を払うだろうか?

また、動画でライフ配信するとなれば、撮影スタッフも必要になる。カメラ3台はないと単調な映像になり見てられない。となると、撮影スタッフのコストも稼がなければならないが、それを有料化した動画配信でペイできるにはどれだけのアクセスが必要になるだろうか?

ともかく、この状態が続けばオーケストラがなくなることは間違いなく、ほとんどがあと数ヶ月ももたないのではないか。

チケット収益がない状態で正団員に給料を払い続けるのも苦しい。オーケストラは人数が多いし、そこにステージマネージャーやライブラリーなどなど舞台裏スタッフもいる。事務局にも人がいる。

自粛要請が緩和されたとしてもこの5月ですでに暑い。夏場はそもそもコンサートシーズンではない。

そして、秋になり涼しくなるコンサートシーズンにはコロナの第2波が来るだろう。

それをオーケストラ連盟も各オーケストラの事務局もわかっているから、寄付を願い出ている。もう寄付くらいしか方法がない。

しかし、どこかのオーケストラひとつだけが困っているというならそこに集中して寄付金を集められようが、どこのオーケストラも寄付を募るとなると寄付金は分散する。

それに寄付金といえども、数千円の小額が大半だろうから、どう集めたって今後、数ヶ月も公演なしのまま存続できるほどは集まりようがない。

そもそもオーケストラが好きなお客さんたちそのものの生活が危ないのだから、それどころでない人が多い。

だから、寄付くらいしか手段がないにせよ、今は社会全体の経済が落ち込んでいて、さらに将来不安がとてつもなく大きいため、寄付したくてもできない、つまり寄付が成り立たないということ。

プロ奏者は公演がないためにYouTubeなどで動画配信をしているけれど、ちょっと危機感がないというか、あってもそれが勘違いされるようなものが多い。

Zoomを使ったものや一人多重録音など、もはや大道芸人にしか見えないし、普段着のままで、その自宅での姿はちょっと幻滅させられる。

コロナが明ければと思っているのかもしれない。

しかしコロナは明けやしない。現実は音楽人生がいきなり終わってしまうところにある。演奏者はそれを本気で自覚しなくちゃいけない。

音楽は自分たちにとって大事なものであっても、多くの人にとっては、それがたとえ音楽ファンであったとしても自分の生活がまず大事なのだから、音楽は二の次どころかずっと遠くにある。

その事実をコロナ以前から演奏者、そして主催者も事務局も強く自覚できていなかったように思う。ただ好きなことを追求するだけで、音楽は人間に必要なものだと自分たちだけで思い込んでいた。

そのせいで新しいニーズをほとんど獲得できないまま、客層はただひたすらに高齢化していった。

そこでコロナ。

もう壊滅的と言っていい。

演奏者の生活を支えるために寄付するなんて余裕はほとんどの人にない。自分の勤め先がなくなるかもしれないし、大恐慌が訪れると予感すれば寄付どころではない。

音楽愛以前の状態にわたしたちはいる。

そして、オーケストラという大きなものを今後支えるだけの莫大な金を寄付で集め続けるのはすでに無理な状態なのだ。

誰かが100万円を寄付したとしても、それは団員数人分の給料1ヶ月分にしかならない。

大企業だって自分たちの従業員を守らなければならないし、会社そのものが危ういのに広告宣伝にもならない寄付はできない。

オーケストラ、そして日本の音楽産業はもうすでに将棋でいう「詰めろ」の状態。いや、もはや「必至」かもしれない。

一流の演奏者でさえもこれから職を失い、路頭に迷う可能性が高い。そして、演奏者は他業種への転職がきかない。

「音楽の思いを伝えたい」とか、そういうお花畑な考えは捨てて、本気の危機感を持たないと、音楽は過去のアーカイブだけのものになってしまう。

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