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ジャック・ロンドンの『火を熾す』が今年のベスト

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結月でございます。

本を読むことがめっきり少なくなってしまったわたし。それにいろいろな理由があるのだけれど、特に小説というものがひどく大げさで、書き手が考えすぎていてむしろそれは現実の人間とは異なるウソなんじゃないかっていう気がしてきたから。

「いやいや、人間ってそんなに絶望的じゃないよ」

そんな気持ちがあって、純文学が人間を現物以上に悲観的になりすぎていると感じている。

特に政治性があるディストピア小説となると、それは取り越し苦労なんじゃないか、人間をあまりにも不信に思えすぎているんじゃないか、そんな気がする。

実際にそれらが書かれてかなりの時間が経った今、小説通りには世界は進んでないから。

そう思えると、それらはとても嘘くさく感じてしまって受け付けない。

人間の本質を描くつもりが、ただの偏屈な妄想じゃないか。人間、そんなに悪くはないよ。

なんて思いつつ、今年も後半になって、少なくなった読書量の中からベストと言えるものがあった。それはジャック・ロンドンの短編集『火を熾す』。 

火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)

火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)

  • 作者: ジャック・ロンドン,新井敏記,柴田元幸
  • 出版社/メーカー: スイッチ・パブリッシング
  • 発売日: 2008/10/02
  • メディア: 単行本
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 この中の『火を熾す』と『生への執着』はズバ抜けていて、短編だけどロベルト・ボラーニョの『2666』を読んだ時に似た衝撃があった。 

2666

2666

 

 『2666』はわたしの今までの全読書の中のベストワン。しかし、ジャック・ロンドンの『火を熾す』はそれに近いくらいに、

「参りました!」

と、唸る小説。

リアリズムであろうか、小説だけど嘘くさくなく、リアルな人間の肉体を感じられる。強烈な自然の中で瀕死な人間の話だからね。政治色などないからね。

それからもっと古典になるけど、イプセンの戯曲『幽霊』もすごくよかった。

イプセンは『人形の家』が有名だけど、『幽霊』は凄みがあった。

他にも気になる小説があるとはいえ、実際に買って読むのはいつになるかなという感じ。

そんなこと言いながらも『火を熾す』はよかったなぁ。

本は図書館で借りずに、身銭を切って読みましょう。

何事も身銭を切らなきゃね。

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