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着物は他人のために着るもの

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結月でございます。

着物というのは「着る物」であって、単純なようで幅が広い。とにかく、今は和装のものを着物と呼ぶ。

それをどう着るか、どう着こなすかは人それぞれであって、とやかくそれを言われる筋合いはないものだけれど、わたしは着物は他人のために着るものだと思っている。

例えば、趣味というのはとても利己的なもので、自分さえ楽しめればよろしく、社会や他者関係を意識するものではない。

着物を趣味で着るのであれば、どんな着物でも好き勝手に着ればいいわけで、どうだっていい。

しかし、着物を美的な位置付けで考えるなら、趣味で好き勝手というわけにいかなくなる。

なぜなら、美しいものとは対象になるのであって、つまりそれは見る人がいるということだから。

総じて趣味で着物を着ている人が美しくないのは、それは自分の楽しさだけに埋没しているからで、他者目線がないゆえだと思う。

京都の女将なんか客商売として着ているから、お客様目線を意識していて、だから美しい。そして、そこに観光客が集まる。

洗練とは他者目線に耐え得るプロセスであり、女優など日々、見られる立場の仕事をしていると綺麗になるのはそういうこと。

さて、着物にもピンからキリまで、そしてその柄も様々だけれど、ちゃんとした着物は他人の目線に耐え得るクオリティで作られているから美しい。

着物がそのようにできているのだから、着る人もそれをちゃんと意識して着るべきだと思う。

そういう社会性が出てくると、着物の美しさはいつしか人々の目を潤すものとなり、趣味よりもさらにグレードアップしたものになる。

それは自慢げに着るという意味ではなく、誰が見ても心地よさを感じる着方がいい。

美しさというのはその存在だけで見る人に与えるいいものがあるのだから、自分も楽しみ、同時に人も喜ばせるのがいい。

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