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ジャック・タチの『プレイタイム』は駄作だけど傑作

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結月でございます。

大昔のフランスの映画監督にジャック・タチという人がいて、映画の歴史の残るすごい人なんだけれど、まあ一般的には全然知られてません。

代表作は『ぼくの伯父さん』で、それはもうヘンテコな映画でトーキーの時代にサイレントみたいな映画を撮り、芸術的というほど重くはないのに意味不明という点でやっぱり芸術的だなって思えるものなんですね。

何が言いたいかってことがあるのかないのか。いえ、映画にはそんなテーマ性は必要なく、感動を大げさに盛り込んだ映画ばかりなことにウンザリしてくると、ジャック・タチの映画がなんだかすごく良く見えるんです。

タチは『プレイタイム』という映画を作り、これが壮大すぎて資金難に陥った上に客は入らない。この大失敗でタチはどん底に落ちるんです。

この映画を見ると『ぼくの伯父さん』と同様に台詞なしのパントマイム。主人公のタチ自身がおもしろいとはいえ、やっぱり退屈といえば退屈で興行的に大失敗するのはよくわかるんですよね。

でも映画の作品という点ではなく、タチがあの映画を撮りたいと真剣になったその心を感じながら観てみるといい映画だなって思うんです。

映画は作品だから作り手の心なんて関係ないと言えばそうですが、あんな映画はクレイジーじゃないと撮れないんだから、つまりまともに考えたら撮らないです。ちょっと考えれば失敗するってわかりますよ。でも、真剣に熱くなるとそういうのは考えなくなる。そうなったとき、作品として失敗も成功も関係ないなんだかすごいものができてしまうんです。

今は特に映画も興行的に失敗しないように企画を立てるので、大失敗はないけれど弩級の映画ってないんです。日本映画だと黒澤明監督の『乱』までじゃないでしょうか。まあ『乱』は成功したと思いますが。でもあのスケールは予算を考えたら撮れないですね。

黒澤さんみたいに金の勘定を最初から考えない、自分が撮りたいもののことしか考えず、そこにぞっこんになるようでないと大きなことってできないです。

人間は思い切りアホにならないとすごいことはできない。そういうものです。頭が良くなって打算的に考えられるようになったらおしまいなんです。

でも、アホになろうと思ってもなれるものじゃない。アホであることって「状態」ですから、狙ってなるものじゃない。

恋愛と同じでしょうか。無理やり誰を好きになろうなんて無理でしょう。でも、好きになったら後先考えない。アホみたいに好きになったら駆け落ちもするしね。

ジャック・タチの『プレイタイム』のことを思い出したのは、もっとアホになれることをやりたいなって思うから。

アホなことも何度もやるとアホでなくなってくる。賢くなってくる。これがいけない。

賢くなると怖いものが出てくる。怖くなる。一方、アホはアホだから怖いがわからない。

素人のほうがいいってことです。素人って知らないからアホだから。そのアホの精神で内容はプロをやる。

今は要領の良さばかりで、ノウハウやハウツーばかりが見受けられる世の中だけど、そういうのはね、小狡いだけですごいことはできませんよ。損得で考えてはいけない。

タチみたいにね、大失敗してもあんな映画を撮っちゃうのがいいんじゃないですか。

 

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