結月でございます。
そういえば先日、着付けのレッスンをしながら生徒さんと話したこと。
「着物の本で、いい本ってないですよね」
ってこと。
そうなんです。着物関連はいい本が少ないです。
書店に行ってあるのは着付けのハウツー本とかばかりだし。
ああいった着付けのハウツー本って、ほとんどは企画出版と言って、着付け教室が出版社に金を払って書籍化してもらうものなんですよ。
本の形態や部数にもよりますが、300〜500万くらいですかね。
出版の経費って300万はかかるっていうので、その経費を自腹で出して、出版社は発行部数の手数料で儲けるやり方です。
で、出版したほうは着付け本を出したことで自分の教室をブランディング化でき、それで収益を上げようというわけ。だから、本屋で売られている着付け本は内容が優れているから出版されているのではなく、着付け教室の営業&広告ツールとして経費自腹で出版されているんですよ。
そりゃ、いい本なんてあるわけないよ。
で、月刊誌の着物雑誌も内容を見ればわかりますが、呉服のカタログ化していて、内容がクソです。
あれも広告費を出してくれる店の宣伝記事なので、ネットだとステマって言われてるものですね。
着物雑誌の内容を見る限り、その編集者には着物のまともな知識はないです。彼らの仕事って、広告料を出してくれる会社や店を探して、そこが満足するような記事を書くことだけなので、着物を着ようとする読者のほうへ視線は向いてません。
で、着物を着こなすことを極めたひとも少なく、そもそも着物のニーズからして本にしたって売れないから、まともな内容の着物本は見当たらないっていう結果になるわけなのです。
さて、そんな悩ましい状況の中で、結月がオススメする本は、こちら!
幸田文ですからね、何と言っても。幸田露伴の娘です。
この本は半分くらいまでの随筆がすごくいいです。半分を超えた後半くらいから書籍化のためのネタ集め的になって無理やり感があります。
でも、文豪が書いたものなので、奥行きが違いますよ!
つまり、着付けがどうとか、そういうハウツー的なものでなく、着物を着るその心を書いた本ってことなんです。
それって書こうと思ったら、文才がないと無理なんで。
だから、着付け本でなく、着物の心得みたいな本を出しているひともいるけど、これまたつまらない。だって、文才、ねーし! 総じて趣味でハーブの勉強して、
「いいですよね、ハーブのある暮らし」
みたいな趣味に毛が生えたくらいのものしかない。
人間への関心がないと、いいものは書けません。それが人間のどこに繋がっていくのか?ってところを描かないと。
あとは白洲正子の本もいいものがあります。今度、紹介しましょう。
宇野千代もいいけど、あのひとはキャラが特殊すぎて、普通に美しく着物を着るっていう点においては参考にならないです。むしろ、オンナの生き方!という意味で読むといいです。
わたしが伝えたいことは、着物をただ着るのではなく、着物で内面を深めてほしいってこと。
ただ単にきれいに着るだけなら、訓練すれば誰だってできるんですよ、着付けなんて。
でも、着物を着た姿から漂う奥行きっていうかな、そういう人間的な深い魅力になるのは簡単じゃない。
わたしがやりたいのはそっちのほうです。
着物は着物でしかない。
着物が自分という人間にとってどういうもので、それによってどういう人間になれるかってことなんです。
そういうことを考えて着るのか、ただ着るだけなのかで大きな差です。
ひとの魅力って、そこに出るんじゃないでしょうかね。