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地球グミを食べるとベロが青くなる

結月でございます。

地球グミというものが入手困難なほどの人気であるらしい。

5歳の愛娘がお気に入りのYouTubeのチャンネルで見たらしく、

「地球グミ、ほしい」

と言うから、

「地球グミ、なんやの、それ?」

と訊くと、YouTubeを見せてくれた。それはピンポン玉くらいの大きさで大陸の絵が描かれたプラスチックに青いグミが入っている。

「こんなの、おいしくないよ、見るからに」

と、無視しつつも、地球グミ、地球グミとうるさい。

「どこで売ってんの、それ?」

と訊くと、5歳児は、

「のってんはアマゾンで買ったって言ってた」

と言う。のってんとは5歳児のお気に入りユーチューバーである。

あまりうるさいからAmazonで検索するとあった。プレミア価格になっているのか、4個で1000円ほどする。

「こんなん、買わん」

と、一言。

「こんな不味そうなものに千円は払いません」

と、わたし。

しかし、店舗で売ってないかと調べると、入荷してもすぐに売り切れるらしい。

ともかく、あんな合成着色料の気持ち悪い色で、不味そうなものと思いつつ、5歳児の着眼点はそこではない。そんな5歳児の気持ちはわかる。

さて、愛娘はバイオリンを習っていて、月2で先生のところに通い、あとはわたしが家で教えている。基本的に平日は毎日30分か40分は弾く。

5歳児相手にわたしは鬼である。バイオリンに関しては鬼親である。

そうなろうと思っているわけでなく、バイオリンは音程を自分で決めなければならないからピアノと違って下手くそな音は耐え難いものだし、音色だって弓が斜めだと聞いていられない音になる。これは聞かされるほうには拷問である。

そんな音を聞かされると我慢できなくなってしまうのであるから、得てして音楽はハードなのである。

5歳児にはまだ自発的なことは難しいし、自分だけで理解して弾くのはできない。だから、褒めて伸ばすとか、優しさで教えるというのはまだ無理であり、それができるようになるのは大きくなってからの話。

だから、バイオリンを習得させようとするとどうしても強制力が必要であり、今、バイオリニストとしてプロでやっていけている人たちはかなりの確率で親が厳しかったに違いない。

なぜなら、先生のところでレッスンしただけで楽器は弾けるようになることは絶対にないからで、自宅でいかに弾くかにかかっている。小さな子供が自発的に楽譜を読んで、楽器を弾くなんてことはあり得ないので親が強制力を発揮する。

だから、プロ奏者として活躍できている人たちはそんな強烈な厳しさを幼少期から経験している人たちで、それだけでなく中学、高校、大学とひたすら練習をしてきたのであり、それはそれはもう一般ピープルが想像もできない厳しさを生き抜けたわずかな人たちなのである。

優しくなんて甘いことを言っていてはまず楽器は弾けるようにならない。そんなスパルタな世界である。

しかし、わたしは愛娘を音楽の世界にやるつもりは全くなく、むしろ行かせない。バイオリンは大人になってからも文化的暇つぶしとして自分が楽しめるくらいに弾ければいい。

ただ今のうちから厳しいのは甘いことをやっても弾けるようにならないことがよくわかっているからで、バイオリンをやるからには弾けるようになるプロセスでやらないと無駄になる。

よく習い事をあれやこれやと闇雲にやらせる親がいるが、ああ言うのは愚の骨頂で、結局何一つ残らない。ひとつのことでさえ習得するのに多くの時間がかかるのであって、それを三つも四つもやらせてしまうとすべてが中途半端になって身につかない。

それに習い事に疲れてしまって、肝腎要の勉強をするスタミナもなくなり、結果勉強ができない馬鹿になる。だから、習い事をさせるならひとつに絞るべきで、向いていなければやめさせる。向いていないことを頑張らせても本人が苦痛だし、身につかず時間の無駄だから。

とまあ、バイオリンに関しては容赦無く鬼になってしまうのであるが、これもある程度大きくなれば自分でやれるようになり、わたしなんか要らなくなる。そこまで行ければオッケーで、そこまで行くために今は厳しくするしかない。

と、連日取り組み始めた曲ばかり練習させていて、なかなかうまく弾けない。奏法のことを説明してもあまり伝わっていない。確かに5歳では理解がちょっと難しい。

わたしが何度もお手本を弾いてもよくわかっていない。こっちも疲れてくる。子供むけにクイズ形式にしてお手本を弾く。ようやく少し伝わる。そして弾かせる。できない。

と、それを毎日繰り返していて、このところやっとできてきた。ようやくわかったようである。5歳児よりわたしのほうが消耗している。でも、シューベルトのその曲が弾けるようになってくると嬉しい。というか脱力する。

いい音が出たときはものすごく褒める。そうしないと何が正しいのか分からなくなるから。

そんなスパルタな日々を共に過ごし、やっと弾けるようになって、

「そうだ。地球グミを買ってやろう」

と思った。

Amazonでは割高だけど手に入る。愛娘はすごく頑張った。今日もよく弾いた。あんな小さい体でよく弾いている。曲がようやくできるようになったところで地球グミのご褒美があっていい。割高でもそれは価値がある。

と、Amazonに発注し、今日届いた。バッグの中に隠して、昨日できたシューベルトが今日もちゃんと弾けたならこれをプレゼントしよう。もし弾けなかったら明日に持ち越し。明日できなければ明後日。

上手ではないが、やっとボウイングも間違えず、なんとか弾けた。そしてプレゼントを渡した。

紙袋をハサミで開けると、

「地球グミ!?」

と、目が輝いた。よほど嬉しかったのだろう、わたしに飛びついてきた。

早速食べると、ベロが青くなっていた。あんなものが美味しいのかわからないが、本人は喜んで食べている。

そんな地球グミを買ったのは愛娘が食べてみたいと仕切りに言っていたからだが、それと同時にこういうものが今ヒットしていて、それがどういうものか、なぜヒットするのかわたし自身が知ってみたかったから。

いくら不味そうに見えても子供に人気があるということは何か理由があるはずなのである。そこに世相や時代を見ることができる。そして、嬉しそうに食べる愛娘を見て、そのヒットの理由がなんとなく感じ取れたように思う。

さて、わたしはグミが大嫌いである。ああいうグニョグニョしたものが苦手で、だから地球グミは興味があっても食べていない。拒絶反応が先に出て、口に入れる気がしない。

愛娘が半分食べたものを見せてもらうと赤いジャムっぽいものが入っていた。嗅いでみるとラズベリーのような香料の匂いがした。するとたちまち喘息の反応が出て、ちょっと呼吸がしにくくなった。

しかし思えば、5歳児からはトレンドを教えてもらっている。彼女がいなければ地球グミなんて一生知らずにいた。鬼滅の刃だって、愛娘が教えてくれたもので保育園の友達との話題にあったらしい。

おかげで鬼滅は映像になった分は全部見た、しかも全部2回ずつ見たから並大抵の知識はある。鬼滅トークはできる。

世代が違う人間といることで得られる新しさ。これはこれから立ち上げるJapan General Orchestra、略してジェネオケも同じでメンバーは基本的に若い奏者で集める理由でもある。自分より上の世代のことは歴史を知っているからよくわかる。しかし若い世代の情報はそこに接しないと得られない。そこには未開拓なものがあふれている。

若いほうが時代の新しさを普通に感じ取って生きている。それを知るほうが楽しいし、先進性がある。地球グミだって不味そうに見えてもグミとしては新しい試みで、今までなかったものだ。

見たことがあるものより、見たことがないものに接したい。

そういう意味でもかなり割高でも地球グミは見ておきたい気持ちになっていた。

しかし、それは地球グミを買った遠因的な動機であり、やはり愛娘がバイオリンをわたしにしごかれながらもよく頑張っているからご褒美をあげたかった。いや、これはご褒美というよりお礼かもしれない。5歳児がわたしに付き合ってくれているかもしれないのだから。

持ちつ持たれつ。

わたしは愛娘にバイオリンをやっておいたほうがいい理論があるし、でも同時に5歳児はわたしの音楽的趣味と付き合ってくれているに違いない。

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